堆肥のペレット成型がそのリン酸利用率に及ぼす影響

要約

ペレット状に成型した牛鶏ふん混合堆肥のリン酸の利用率は未成型のバラ堆肥と同等以上であり,過燐酸石灰と遜色ない。

  • キーワード:堆肥ペレット、利用率、リン酸、牛ふん堆肥、乾燥鶏ふん
  • 担当:総合的土壌管理・暖地畑土壌管理
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、リン酸肥料等の高騰があり、施肥効率の向上と家畜ふん堆肥等の有効利用による肥料代替が一層求められている。2012年8月に普通肥料の公定規格が改正され、家畜ふん堆肥を肥料原料として利用することが可能となり,今後は家畜ふん堆肥中に多く含まれるリン酸,カリを活用した肥料の開発が進むものと期待される。
家畜ふん堆肥のリン酸肥効率は、水溶性のリン酸が主成分であるリン酸肥料の6~7割程度とされている。しかしながら,ペレット状に成型した場合そのリン酸利用率への影響は明らかで無い。そこで、牛ふん堆肥と乾燥鶏ふんを混合して成分調整した牛鶏ふん混合堆肥を用いて堆肥の成型がそのリン酸利用率に及ぼす影響についてポット試験と圃場試験により明らかにするとともに,リン酸肥料として一般的な過燐酸石灰とリン酸の肥効を比較する。

成果の内容・特徴

  • 中課題名:根域の制限される条件では,リン酸施用量を変化させた際の作物によるリン酸吸収量の応答は、堆肥ペレットと未成型のバラ堆肥で有意に異なる(図1)。バラ堆肥のリン酸利用率が過燐酸石灰に劣るのに対して、ペレットに成型することによりリン酸利用率は高まり,過燐酸石灰と同等となる(表1)。
  • 中課題番号:ポットから根を掘り上げると多数の堆肥ペレットが絡みついている(写真1)ことから、土壌を介さずにペレットから直接リン酸を吸収できることがリン酸の利用率が向上する要因と考えられる。
  • 根域の制限されない条件では堆肥の形態,資材の違いによりリン酸の吸収量、収穫物収量に有意な差が認められない場合もある。リン酸施用量を同一としたスイートコーン(全面全層施肥)では,堆肥ペレットの施用によりリン酸の吸収量はバラ堆肥並びに過燐酸石灰に比べて有意に大きいが、チンゲンサイ・ダイズでは堆肥の形態の違いによる有意な差は認められない(表2)。また,いずれの作物についてもペレット状に成型した牛鶏ふん混合堆肥のリン酸利用率は過燐酸石灰と遜色ない。

成果の活用面・留意点

  • 牛鶏ふん混合堆肥ペレットはローラーディスクダイ方式で製造された市販品を用いた。本方式で製造された堆肥ペレットの窒素無機化特性は,未成型のものと変わらないことが報告されている(松元, 1999)。
  • リン酸肥沃度が低くリン酸吸収係数の大きい黒ボク土で行った試験である(可給態リン酸38.1 mgP2O5kg-1;リン酸吸収係数22.9 gP2O5kg-1)。

具体的データ

 表1~2,図1,写真1

その他

  • 中課題名:暖地畑における下層土までの肥沃度評価と水・有機性資源活用による土壌管理技術の開発
  • 中課題整理番号:151a3
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:荒川祐介,山口典子
  • 発表論文等:荒川祐介 (2012) 土肥誌、83(3):249-255