地域資源、畦連続使用栽培、緑肥間作を活用した南九州地域の有機畑輪作体系

要約

ダイコン作付前焼酎廃液濃縮液施用、ダイコン作付後無施肥サツマイモ畦連続使用栽培、畦間エンバク間作の組み合わせによる有機栽培体系でダイコン、サツマイモともに慣行栽培とほぼ同等の生産性を複数年得ることができる。

  • キーワード:畦連続使用、サツマイモ、ダイコン、エンバク、焼酎廃液濃縮液、線虫、雑草
  • 担当:環境保全型農業システム・有機農業体系
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域、生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

有機農業への国民の関心と期待が高まる一方、国内の有機農産物出荷量は全農産物生産量のわずか0.35%(2009年・有機JAS以外を含む)に過ぎないのが現状である。有機農業生産を拡大するためには収量、品質だけでなく、コスト面、労力面でも慣行栽培に優るとも劣らない有機栽培技術の開発が必要である。そこでわが国有数の農業生産地域である南九州において、当地域の基幹作物であるダイコンとサツマイモを対象とし、大規模企業的経営への導入を念頭に置いた合理的な有機畑輪作体系を構築する。

成果の内容・特徴

  • 有機栽培体系(以降、有機)は南九州の地域資源である焼酎廃液濃縮液のダイコン作付前年1回施用、ダイコン後サツマイモ畦連続使用栽培、畦間エンバク間作の3技術要素を軸に構成される(図1)。
  • 毎作、土壌消毒、施肥、耕うん畦立て、薬剤防除を実施する慣行栽培体系と比較して、有機のダイコンでは87~100%、サツマイモでは104~120%の収量が得られ、ダイコンの障害率、サツマイモの線虫被害度も同等に抑えられる(図2)。
  • ダイコン-サツマイモ作を通じての畦間エンバク間作により、サツマイモ作の畦間雑草の発生をほぼ完全に抑制できる(図3)。
  • 焼酎廃液濃縮液年1回施用のみで有機の土壌化学性は3年間ほぼ均衡で維持される(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 所内有機JAS認定圃場(腐植質黒ボク土)での試験結果であり、栽培管理は有機JAS法に則って実施した。本成果は生産者等がサツマイモを中心とした有機畑輪作を開始する場合の栽培管理の参考になる。
  • 都城市内の大規模農業生産法人による現地実証試験においても同様の結果を得ており、ダイコンとサツマイモを合わせ年間約65万円/10a(2012年)の粗収益を上げている。
  • 焼酎廃液濃縮液は石灰等の含有率が低いことから、本栽培体系を継続する場合には定期的に土壌診断を行い土壌化学性等について把握する必要がある。

具体的データ

 図1~4

その他

  • 中課題名:有機農業の成立条件の科学的解明と栽培技術の体系化
  • 中課題番号:153b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008-2012年度
  • 研究担当者:新美 洋、鈴木崇之、上杉謙太、岩堀英晶、立石 靖、石井孝典、安達克樹
  • 発表論文等:ダイコン-サツマイモ有機畦連続使用栽培マニュアル(3月発行予定)