紫黒米の給与により暑熱環境下の種雌豚の血漿抗酸化状態が改善する

要約

豚の消化システムにより紫黒米から多量の抗酸化成分が遊離する。紫黒米を暑熱環境下の種雌豚に給与すると、摂食開始1時間後の血漿抗酸化能が有意に上昇する。

  • キーワード:繁殖豚、暑熱、酸化ストレス、抗酸化成分、有色素米
  • 担当:気候変動対応・畜産温暖化適応
  • 代表連絡先:電話 q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

暑熱環境下の家畜の生産性低下には酸化ストレスが大きく関与すると言われる。赤米や紫黒米などの有色素米は、アントシアニン等の抗酸化成分を含有することから、豚が有色素米を消化吸収して抗酸化成分を体内に取り込むことが出来れば、暑熱環境下の酸化ストレス改善のための有効な飼料原料となる可能性がある。これまでに有色素米を養豚用飼料原料として活用した報告は見られないが、最近、飼料用米と食用米との識別のために、有色の飼料用米の開発が求められており、有色素米の豚での利用価値を早急に評価する必要がある。そこで、豚の消化システムが有色素米の抗酸化成分を遊離させることができるか、また、暑熱環境下の種雌豚への有色素米の給与が体内の抗酸化状態に影響を及ぼすことができるか否かを明らかにすることをねらいとする。

成果の内容・特徴

  • 豚の消化管(胃と小腸)を想定した人工消化によって、トウモロコシおよび飼料用米「まきみずほ」、食用米(混合米)と比較して、赤米「夕やけもち」からは1.3倍の、紫黒米の「朝紫」からは6.1倍の抗酸化成分が遊離する(図1)。
  • 人工消化試験による紫黒米「朝紫」からの抗酸化成分の遊離は、胃内での消化を想定した塩酸ペプシンの段階で、小腸での消化を想定したパンクレアチン消化までの約90%となることから、豚の胃内でも多くの抗酸化成分が遊離すると考えられる。(図2)。
  • 暑熱環境下で飼育した種雌豚に紫黒米「朝紫」を50%配合した飼料を給与すると、トウモロコシや食用米「ヒノヒカリ」、赤米「夕やけもち」をそれぞれ配合した飼料を給与した場合と比較して、摂食開始1時間後に血漿抗酸化能が有意に上昇する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 豚の消化システムが有色素米を消化して抗酸化成分を体内に取り込めることを示唆する情報である。
  • 紫黒米「朝紫」を50%配合した飼料を2.2kg給与した場合、摂食開始1時間後に血漿抗酸化能は最高値を示したのち、2時間後、4時間後と徐々に低下する。1日1回あるいは2回の制限給餌で飼養する繁殖豚において、暑熱ストレスを緩和するためには、適切な配合割合や給与量、給与方法をさらに検討する必要がある。

具体的データ

 図1~3

その他

  • 中課題名:畜産由来の温室効果ガス制御技術の高度化と家畜生産の温暖化適応技術の開発
  • 中課題番号:210c0
  • 予算区分:委託プロ(国産飼料)、交付金
  • 研究期間:2010~2011年度
  • 研究担当者:松本光史、井上寛暁、山崎信、村上斉、梶雄次
  • 発表論文等:松本ら(2012)日豚会誌、49(3):109-116