イチモンジカメムシ雄成虫が放出するフェロモン成分比は日齢によって変化する

要約

イチモンジカメムシ雄成虫は3成分からなるフェロモンを放出するが、その放出量は個体間で大きく異なる。また、その成分比は羽化後日齢によって変化し、β-sesquiphellandreneの割合は日齢とともに増加する。

  • キーワード:イチモンジカメムシ、フェロモン、成分比、個体間差、ダイズ
  • 担当:気候変動対応・暖地病害虫管理
  • 代表連絡先:電話 q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ダイズの子実を吸汁加害するイチモンジカメムシは雄成虫がフェロモンを放出し、同種の雌雄成虫を誘引する(樋口,1999)。フェロモン成分としてβ-sesquiphellandrene(以下Sesq)、(R)-15-hexadecanolide(以下R15)および methyl (Z)-8-hexadecenoate(以下Z8)の3成分が室内試験により同定され(Leal et al., 1998)、この3成分の混合物は野外において同種の雌雄成虫および幼虫を誘引する(Endo et al., 2010)。雄成虫のフェロモン保持量をヘキサン浸漬法により抽出し分析したところ、羽化後日齢により3成分の保持比率が異なることから(Endo et al., 2007)、フェロモンの放出成分比も日齢によって異なる可能性がある。そこで、イチモンジカメムシ雄成虫のフェロモン放出量をビーカー捕集法により個体毎に調べ、羽化後日齢による放出量および成分比への影響を調べる。

成果の内容・特徴

  • イチモンジカメムシのフェロモンは羽化3~6日後から放出が開始されるが、その放出量は個体間により大きく異なる(表1)。
  • フェロモン放出量の少ない雄成虫(No. 7~10)のほとんどは試験終了前に死んでおり、寿命が短い個体はフェロモン放出量が少ない(表1)。
  • 羽化15~16日目のフェロモン放出量と羽化16日目のフェロモン保持量には強い相関が認められる(r= 0.941, p = 0.0016)(表1)。
  • フェロモン放出開始初期は全フェロモン量に占めるR15の割合が高いが、日齢を重ねる毎にSesqの占める割合が増加し、羽化後12日目以降はおよそ80%以上をSesqが占める(図1)。

成果の活用面・留意点

  • イチモンジカメムシのフェロモンの成分比に関してはLeal et al.(1998)によりSesq:R15:Z8=10:4:1と報告された。しかし、本結果から本種のフェロモンの成分比は一定ではなく、日齢により変化することが明らかとなった。
  • 成分比と誘引力との関係については別途調べる必要がある。

具体的データ

表1、図1

その他

  • 中課題名:暖地多発型の侵入・新規発生病害虫の発生予察・管理技術の開発
  • 中課題番号:210d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:遠藤信幸、安田哲也、和田節、武藤進悦(富士フレーバー)、佐々木力也(富士フレーバー)
  • 発表論文等:
    1)Endo N. et al. (2012) Pshche, Vol.2012 Article ID 609572.
    2)武藤ら「イチモンジカメムシの誘引剤」特許登録 2012年8月24日(第5066740号)