製糖開始期の糖度が高い熊毛地域向け茎重型さとうきび新品種候補「KTn03-54」

要約

さとうきび新品種候補「KTn03-54」は甘蔗糖度、純糖率が高く、優れた早期高糖性を有する。また、一茎重が大きく、脱葉性が良いため、収穫や原料茎調製の作業性にも優れる。「NiF8」の代替に利用することで、熊毛地域の製糖開始期の糖度改善が期待される。

  • キーワード:さとうきび、茎重型、早期高糖
  • 担当:ブランド農産物開発、サトウキビ品種開発・利用
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・作物開発・利用研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

鹿児島県熊毛地域のさとうきびの基幹品種「NiF8」は、収穫面積の約8割を占める。「NiF8」は高糖、多収で主要病害への抵抗性を有しており、さらに育成当時は画期的な早期高糖性品種であった。熊毛地域は主要な栽培地域で最も北に位置し、さとうきびの生育適期が短い。一方で、製糖開始期は11月下旬から12月上旬と主要な栽培地域で最も早い。このため、早期高糖性の「NiF8」でも製糖開始期の糖度が不安定であり、早期高糖性を高めた多様な品種が求められている。このため、まず、茎数型で株出し能力が高く早期高糖性に優れる品種「Ni22」を育成したところであり、これを補完する梢頭部や枯葉の除去などの作業性に優れる茎重型品種が求められてきた。

成果の内容・特徴

  • 「KTn03-54」は、台湾糖業研究所で行われた「ROC14」と「CP57-614」との交配に由来する。交配種子を日本に導入し、2003年に実生選抜を実施して以降、早期高糖性と茎重型での多収性を重視して選抜した系統である(図1)。
  • 「KTn03-54」は春植え、株出しともに「NiF8」に比べて甘蔗糖度、純糖率が高く、製糖品質に優れ、可製糖量も多い(表1)。
  • 「KTn03-54」は優れた早期高糖性を有し、「NiF8」と比較して10月以降のBrixが高く推移する(図2)。このため製糖開始期の12月の甘蔗糖度、純糖率は「NiF8」よりも高く、「Ni22」と同程度の早期高糖性を有する(表1)。
  • 「KTn03-54」は「NiF8」や「Ni22」に比べて太茎で一茎重が大きい(表1)。また、脱葉性や耐倒伏性に優れる(表2)。このため梢頭部除去などの原料茎調製の作業性に優れ、手刈り収穫にも適する。

普及のための参考情報

  • 普及対象:さとうきび生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積:鹿児島県熊毛地域・300ha
  • その他
    1)熊毛地域における製糖開始期の「NiF8」の代替として、鹿児島県が奨励品種の採用を予定している。
    2)株出しでの茎数が少ないため、株出し管理を適切に行い茎数確保に努める。
    3)モザイク病に弱いため、植付けには無病種苗の使用を徹底する。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:新たな付加価値を持つ多用途サトウキビ品種の育成と高度利用技術の開発
  • 中課題番号:320c0
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:2002~2012年度
  • 研究担当者:境垣内岳雄、寺内方克、服部太一朗、田中穣、石川葉子、松岡誠、氏原邦博、伊禮信、寺島義文、杉本明、大内田真(鹿児島農総セ)、上野敬一郎(鹿児島農総セ)、藤田英介(鹿児島農総セ)