カンショ低温糊化性でん粉の迅速判別法

要約

1.25%の水酸化カリウム溶液をカンショでん粉に滴下して検鏡するアルカリ溶解検鏡法により、糊化開始温度が異なる2つのタイプのでん粉(低温糊化性型、通常型)を容易かつ迅速に判別することができる。

  • キーワード:サツマイモ、こなみずき、低温糊化性でん粉、アルカリ崩壊性、迅速判別
  • 担当:ブランド農産物開発・カンショ品種開発・利用
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

カンショ「こなみずき」の塊根から低温糊化性でん粉を製造する際には「シロユタカ」等が有する通常型でん粉の混入を防がなければならない。「こなみずき」と従来のでん粉用品種を外観で区別することは困難なため、原料に低温糊化性型、通常型、いずれのでん粉が含まれるか調べるためには、塊根よりでん粉を抽出しラピッドビスコアナライザー(RVA)分析を行う必要がある。しかし、かなりの時間と労力を要するため、原料受け入れ時に、異品種の混入を簡易かつ迅速に確認できる手法の開発が求められている。そこで、アルカリ溶液が常温ででん粉粒を糊化させる特性を利用した低温糊化性でん粉の迅速判別法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 1.25%水酸化カリウム(KOH)溶液をでん粉に滴下し3分後に顕微鏡観察(倍率100倍)すると低温糊化性型では溶解したでん粉、中間型では膨潤したでん粉粒と生のでん粉、通常型では生のでん粉のみが観察され、これを利用して低温糊化型と通常型のでん粉を容易に判別することができる(図1)。
  • カンショの塊根を切断し、切断面をスライドグラスにこすりつけ微量のでん粉を付着させたのち1.25%KOH溶液を滴下しても、抽出したでん粉を用いた時と同様の結果が得られる。また、滴下後すぐに検鏡してもでん粉のタイプを判別することができる(図2)。
  • カンショの塊根を使ったアルカリ溶解検鏡法は分析サンプルの調製が容易である。分析時間はRVA分析の1/40以下に短縮でき、専用の分析機器を必要としない。塊根に含まれるでん粉のタイプを容易かつ迅速に判別できるため、でん粉工場における原料の品質検査のみならず栽培時等の品種の区分管理、新品種育成のための育種選抜現場でも適用できる(図3)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:カンショでん粉製造事業者、カンショ栽培普及機関、カンショでん粉を対象とした試験研究機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:南九州の低温糊化性でん粉製造事業者1社が原料受け入れ時の品質検査として本手法を導入しているとともに、カンショ育成機関で低温糊化性でん粉の形質を選抜するための手法として利用している。
  • その他:本成果における糊化開始温度はRVAで測定した粘度上昇温度のことを示す。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:高品質・高付加価値で省力栽培適性に優れたカンショの開発
  • 中課題整理番号:320b0
  • 予算区分:交付金、実用技術、農食事業
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:小林晃、片山健二、境哲文、甲斐由美、吉永優、高畑康浩
  • 発表論文等:
    1)小林ら(2014) 育種学研究16(2):37-41
    2)九州研ら(2014)「こなみずきの品種・栽培マニュアル」