用途別・都市別に見た消費者のイチゴ購買行動
要約
消費者のイチゴ購買行動は、用途(自家消費用か贈答用か)だけでなく、居住する都市によっても違いがある。自家消費用は購入時の重視項目(新鮮、有名な品種等)に、贈答用は購入場所(スーパー・量販店、デパ地下、農家農園)に都市間の差がある。
- キーワード:消費者の購買行動、自家消費用、贈答用、都市間、イチゴ
- 担当:経営管理システム・ビジネスモデル
- 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
- 研究所名:九州沖縄農業研究センター・作物開発・利用研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
今日イチゴは、輸送技術の発達や品種開発競争の結果、消費者に多様な選択肢を提供している。このような状況の下、有利にイチゴを販売するには、消費者ニーズを勘案し、それぞれのイチゴの魅力を適切に伝え、販売戦略を立てる必要がある。そこで、大消費地での消費者のイチゴ購買行動を明らかにするため、三大都市圏のうち東京都23区・大阪市・名古屋市の居住者を対象に、2011年1月にインターネット調査を実施した。まず調査会社の登録モニター1万人を対象にイチゴの購入経験について事前調査をし、次に自家消費用・贈答用の両方でイチゴを購入したことのあるモニターの中から三都市の人口比率に準じて721人を抽出し、本調査を行った。
成果の内容・特徴
- 購入場所を用途別に見ると、自家消費用・贈答用ともにスーパー・量販店が最も多い(表1)。ただし、自家消費用では回答者の95%がスーパー・量販店で購入しているのに対し、贈答用では64%である。また、贈答用の購入場所は、デパート食品売り場、フルーツ専門店が多い。
- 三都市間で購入場所を比較すると、自家消費用よりも贈答用で都市間に有意差が見られる。贈答用に着目して都市別に見ると、東京都23区の場合、デパート食品売り場の割合が高い。名古屋市と大阪市は、スーパー・量販店の割合が高い。贈答用では、購入場所に都市間差があるため、販売形態(パッケージ・1パック重量等)に関する戦略を都市によって変える必要がある。
- イチゴ購入時に重視する項目を見ると、自家消費用・贈答用ともに味、新鮮、糖度が上位に来る(表2)。また、自家消費用に比べて贈答用では、発色、形、大粒といった外観や、高級感が重視される。
- 三都市間でイチゴ購入時に重視する項目を比較すると、自家消費用で都市間に有意差が見られる。自家消費用に着目して都市別に見ると、東京都23区では、香り、大粒、有名な品種が重視される。大阪市は、新鮮を重視し、そのため日持ちを他都市より重視する。また、統計的な有意差は見られないものの、名古屋市では、安価、糖度、発色、形が他都市よりも重視される。自家消費用では、イチゴ購入時に重視する項目に都市間差があるため、品種の選択や価格設定に関する戦略を都市によって変える必要がある。
成果の活用面・留意点
- 生産者やJA等が広域でのイチゴの販売戦略を立てる際に参考になる。
- 調査回答者の年齢構成は20歳代から60歳代までほぼ20%ずつで、また男女比率は男性38%、女性62%である。人数構成は、東京都430人、名古屋市108人、大阪市133人である。なお回答に際し、「贈答用」は親しい人へのプレゼントを想定してもらった。
具体的データ
![表1~2](../../../files/karc13_s04_1.png)
その他
- 中課題名:地域農業を革新する6次産業化ビジネスモデルの構築
- 中課題整理番号:114b0
- 予算区分:交付金、実用技術
- 研究期間:2010~2013年度
- 研究担当者:大西千絵、後藤一寿、森江昌史
- 発表論文等:大西(2011)九州沖縄農研農業経営研究資料、13:1-31