黒毛和種繁殖牛では緩慢な黄体退行は鈍性発情の原因となる

要約

黒毛和種繁殖牛では暑熱期に鈍性発情の発生が増加する。また乗駕許容牛と比較すると鈍性発情牛では黄体退行開始後1日目の黄体ホルモンが高い。このことから、緩慢な黄体退行は鈍性発情の原因となる。

  • キーワード:肉用繁殖牛、発情、乗駕許容行動、鈍性発情、発情検知
  • 担当:家畜生産・繁殖性向上
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄研究センター・畜産草地研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ウシにおいて夏季の受胎頭数の低下は大きな問題である。この受胎頭数低下の理由としては、夏季の受胎率低下よりも受胎頭数の低下が大きく関与しており、鈍性発情の発生増加が受胎頭数低下の原因を招くと考えられている。肉用牛において、鈍性発情は過去現在ともに卵巣を原因とする繁殖障害の中で最多の疾患である。そのことから、夏季の生産性向上のためには鈍性発情の原因解明とその対策が重要と考える。
肉用繁殖牛において暑熱と発情行動との関連性を調べるとともに、鈍性発情の原因を臨床内分泌学的手法により検索した。

成果の内容・特徴

  • 暑熱期、移行期および冷涼期の乗駕許容行動の発現は、冷涼期の90.0%に対して暑熱期では53.7%と有意(P<0.05)に低く、暑熱期では乗駕許容行動の発現が減少する(図1)。
  • 鈍性発情牛と乗駕許容牛の血中黄体ホルモンの推移を比較すると濃度と経過日数との交互作用に有意(P<0.05)な差を認める。相対濃度は黄体退行後2日目には同等となるが、鈍性発情牛では黄体退行1日目の相対濃度が高く推移する(図2)。このことから明瞭な発情発現には急激な黄体退行が重要であり、緩慢な黄体退行は鈍性発情の原因となることを示している。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は鈍性発情に関する知見として有用である。また鈍性発情の防除技術開発に寄与する。
  • 乗駕許容行動は、農研機構・東北農業研究センターで開発した乗駕許容センサー を用い検知している。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:受精・妊娠機構の解明と調節による雌牛の繁殖性向上技術の開発
  • 中課題整理番号:130b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:竹之内直樹、阪谷美樹、福重直輝、伊賀浩輔、志水学
  • 発表論文等:竹之内ら(2013)日本胚移植学雑誌、35(3):97-108