生育温度が低いと水耕栽培でのコマツナの硝酸イオン濃度は低下する

要約

気温が低い条件でコマツナを水耕栽培すると、硝酸還元酵素活性が高くなることから、可食部に含まれる硝酸イオン濃度は低下する。

  • キーワード:コマツナ、硝酸イオン、硝酸還元酵素、生育温度、水耕栽培
  • 担当:日本型施設園芸・イチゴ等野菜周年生産
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・水田作・園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

硝酸イオンの多量摂取により人体に有害な化合物が生成される危険性が指摘されており、硝酸イオンの摂取量を低く抑えることが望ましい。我が国では、硝酸イオンの80%以上が野菜から摂取されていることから、野菜、特に葉菜類の硝酸イオン濃度を低減させることが求められている。葉菜類の硝酸イオン濃度は、高温期には低温期よりも高い傾向にあるが、硝酸イオン濃度に及ぼす生育温度の詳細な影響については明らかではない。そこで、温度条件を制御した人工気象器内でコマツナを水耕栽培し、生育温度と硝酸イオン濃度、ならびに硝酸同化の鍵酵素である硝酸還元酵素(nitrate reductase;NR)活性との関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 気温(明/暗期)を10/5、15/10、20/15、25/20、30/25および35/30°Cに制御した環境条件でコマツナを栽培し、最大葉長(25cm程度)を指標として収穫する場合、25/20および30/25°Cで最も早く収穫でき、それより生育温度が高い、あるいは低いと、栽培期間は長くなり、収穫が遅くなる(表1)。
  • 生育温度が低いと、可食部の硝酸イオン濃度は低い傾向にある(図1A)。
  • 生育温度が低いと、活性型である非リン酸化NR活性は高くなる(図1B)。また、不活性型であるリン酸化NR活性も含めた全NR活性も生育温度が低いほど高い傾向にある。
  • 活性型NR活性および全NR活性と硝酸イオン濃度との間には、負の相関関係がある。生育温度が低いと、NR活性が高くなることから、可食部の硝酸イオン濃度は低下する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 水耕栽培や植物工場での葉菜類の硝酸イオン濃度を低減させるための基礎的知見として活用する。
  • 12時間日長、光合成光量子束密度(PPFD)300 µmol・m-2・s-1に制御した人工気象器内で、大塚A処方1/2単位を培養液とした湛液式水耕栽培で、本葉1枚が展開した「はるみ小松菜」を栽培した結果である。培養液は3日ごとに更新し、培養液の温度管理は行わなかった。
  • コマツナの硝酸イオン濃度には、品種間差があるが、「楽天」でも生育温度が低いと、NR活性が高くなり、硝酸イオン濃度は低下する。

具体的データ

表1~2、図1

その他

  • 中課題名:イチゴ等施設野菜の周年多収生産システムの開発
  • 中課題整理番号:141d0
  • 予算区分:高度化事業 、交付金
  • 研究期間:2002~2013年度
  • 研究担当者:壇和弘、大和陽一、今田成雄
  • 発表論文等:壇ら(2014)園学研、13(1):41-46