六条大麦(裸麦)の追加防除によるかび毒蓄積低減

要約

六条大麦(裸麦)に対する薬剤の開花期散布と開花10~20日後頃の追加散布により赤かび病菌によるかび毒蓄積の低減が期待できる。

  • キーワード:赤かび病、かび毒、六条大麦(裸麦)、デオキシニバレノール、ニバレノール
  • 担当:食品安全信頼・かび毒リスク低減
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

麦類の赤かび病に対しては、発病の抑制およびかび毒(デオキシニバレノール:DON、ニバレノール:NIV)蓄積の低減が重要である。
大麦においては、閉花受粉性の二条品種では、穂揃い期10日後頃の葯殻抽出期が赤かび病の防除適期である(2007年度普及成果情報)。一方、六条品種では、皮麦品種と裸麦品種とで赤かび病の病勢進展とかび毒蓄積特性が異なることが明らかにされているが、かび毒蓄積を低減する薬剤散布時期は明らかにされていない。そこでまず、六条大麦(裸麦)(開花受粉性)におけるかび毒蓄積低減効果の高い薬剤散布時期を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 六条大麦(裸麦)において、開花期に薬剤散布を行った場合、発病の抑制効果は高いがかび毒蓄積の低減効果は低い。しかし、開花10~20日後に薬剤散布を行った場合、発病の抑制効果は低いがかび毒蓄積の低減効果は高い(表1)。
  • 開花期の薬剤散布に加え、開花期からそれぞれ10、20、30日後に薬剤散布を行った場合、かび毒蓄積の低減効果は開花期20日後が最も高い(表2)。
  • 以上のことから、六条大麦(裸麦)に対して、薬剤の開花期散布と開花10~20日後頃の追加散布により赤かび病菌によるかび毒蓄積の低減が期待できる。

成果の活用面・留意点

  • 供試薬剤のチオファネートメチル水和剤の農薬登録(2013年12月現在)は、麦類(小麦を除く)の赤かび病では、使用時期が収穫30日前まで、使用回数は3回以内(出穂期以降は1回以内)となっており、現時点では本水和剤を六条大麦(裸麦)の開花10~20日後散布に使用できない。なお原体メーカーは、使用時期と使用回数の適用拡大に向けて対応中である。
  • 接種(赤かび病菌培養トウモロコシ粒の畦間散布)と出穂前からのスプリンクラー散水を行い、赤かび病多発条件下で試験を行っている。
  • 他の薬剤による六条大麦(裸麦)のかび毒蓄積低減効果については、今後検討が必要である。

具体的データ

表1~2

その他

  • 中課題名:かび毒産生病害からの食品安全性確保技術の開発
  • 中課題整理番号:180a0
  • 予算区分:委託プロ(生産工程)、交付金
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:宮坂 篤、吉田めぐみ、鈴木文彦、井上博喜、川上 顕、中島 隆、平八重一之
  • 発表論文等:宮坂ら(2013)九病虫研会報、59:1-6