ミナミアオカメムシ成虫は紫外光に強く誘引される

要約

ミナミアオカメムシ成虫の光に対する選好性は波長間で異なり、より短波長側の光を選好し、雌雄成虫ともに紫外光(373 nm)を強く選好する。また、橙色光(583 nm)よりも緑色光(534 nm)、緑色光よりも青色光(444、464 nm)を選好する。

  • キーワード:ミナミアオカメムシ、走光性、LED、紫外光、ダイズ、水稲
  • 担当:気候変動対応・暖地病害虫管理
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、温暖化に伴うミナミアオカメムシの分布域の拡大、およびそれに伴うダイズや水稲への被害が問題となっているが、現状では有効な発生予察手段がない。また、本種は予察灯に誘引されることが知られているが、波長の違いと誘引効率との関係についての知見がないことから、どのような波長特性を持つ光源が有効かを判断する基準がない。一方、近年、紫外から可視光、赤外までの広範囲な波長域に対応したLEDが開発され、波長が昆虫の行動に与える影響を簡易に評価できるようになった。そこで、LEDを用いて、様々な波長域の光に対するミナミアオカメムシ成虫の飛翔行動を室内試験で観察し、本種の波長選好性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 複眼の感度波長域である373、444、464、534、583nmをピーク波長とするLEDパネルを同じ光強度で同時に点灯させ、ミナミアオカメムシ成虫の飛翔行動を観察すると、雌雄ともに60%以上の個体が373 nmの紫外光を選好する(図1)。
  • 紫外光以外の4波長を同時に点灯させた場合は、青色光(444、464 nm)への選好性が強く、橙色光(583 nm)に対する選好性は弱い(図2)。また、緑色光(534 nm)よりも青色光を選好する個体が多い。
  • 444 nmと464 nmの青色光間の選好性試験では、雌雄成虫とも光源間で有意差は認められない(図3左)。
  • 緑色光(534 nm)と橙色光(583 nm)の2波長間の選好性試験では、雌雄成虫とも80%以上の個体が緑色光を選好する(図3右)。
  • 以上の結果から、ミナミアオカメムシ成虫の波長選好性は、紫外(373 nm)>>青(444、464 nm)>緑(534 nm)>>橙(583 nm)の順である。

成果の活用面・留意点

  • LEDは発光の波長帯域が狭いが省電力であることから、バッテリーなどを使用した簡便なライトトラップの光源として利用可能であり、本結果は、光源を選定する際の基礎的知見となる。
  • 予察灯などで通常使用されている白熱灯よりも、紫外域の光を多く含む水銀灯やブラックライトの方が、本種に対して高い誘引効果を持つと考えられる。
  • 過度の紫外光は有害であることから、可視光域で光源を作成や選定する場合は、紫から青色域(380~480 nm)の光を多く含むものが望ましい。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:暖地多発型の侵入・新規発生病害虫の発生予察・管理技術の開発
  • 中課題整理番号:210d0
  • 予算区分:委託プロ(光応答)、交付金
  • 研究期間:2009~2012年度
  • 研究担当者:遠藤信幸、弘中満太郎(浜松医大)
  • 発表論文等:遠藤ら(2014)応動昆、58(1): 23-28