高ビタミンC含量で食味のよいイチゴ品種「おいCベリー」

要約

「おいCベリー」は、収量性に優れ、ビタミンC含量が「さちのか」の約1.3倍と多く、総ポリフェノール含量も多く、高い抗酸化活性を有する消費者の健康志向に対応した良食味の果実品質が優れた促成栽培用品種である。

  • キーワード:ビタミンC、健康機能性、良食味、高付加価値、促成栽培
  • 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・園芸研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

野菜類の健康維持機能に対する消費者の関心が高まっており、イチゴにおいても高ビタミンC含有品種の育成が望まれている。現在栽培されているイチゴ品種には生果100g当たり約60mgのビタミンCが含まれ、大半を生食により消費されるため、その供給源としての意義は大きい。そこで、安定してビタミンC含量が多く、果実品質と収量性に優れる促成栽培用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「おいCベリー」は、やや晩生の炭疽病抵抗性系統9505-05を母親に、食味が優れ、ビタミンC含量が多く、促成栽培に適した「さちのか」を父親として交雑し、2000年に得られた実生から選抜した促成栽培に適した品種である。
  • 果実は「とよのか」より大きく、円錐形で濃赤色である(図1左、中央)。硬度は「さちのか」と同程度で高く、輸送性に優れる(表1)。糖度は「さちのか」より高く、酸度は同程度、香りが強く、食味は良好である(表1)。
  • 果実のビタミンC含量は「さちのか」の約1.3倍、「とよのか」の約1.6倍であり(図2)、収穫期間を通して安定的に多い(データ略)。総ポリフェノール含量も多く、高い抗酸化活性を有する(図2)。
  • 早晩性は「とよのか」並で、促成栽培に適する(表2)。普通促成栽培では収穫開始期は「とよのか」より2日程度遅く、年内収量および2月末までの早期収量は「とよのか」よりやや少ないが、4月末までの総収量は「とよのか」より多く、「さちのか」と同程度であり、商品果率は高い(表2)。夜冷短日処理による早出し効果は高い(データ略)。
  • うどんこ病には中程度の抵抗性、萎黄病および炭疽病には罹病性である(表1)。
  • 生産者からは、厳冬期の草勢が強く果房伸長性が優れるためジベレリン処理が必要なく(図1右)、「さちのか」と比較して商品果収量と大玉率が高いこと、市場関係者からは、果実硬度が高く日持ち性に優れ、収穫期間を通じて食味のばらつきが小さいことが評価されている。市場価格は「さちのか」と同等~やや高く取引されている。

普及のための参考情報

  • 普及対象:イチゴ生産者、消費者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:2014年12月末の利用許諾件数9件、推定普及面積は約35haであり、5年後には全国の促成栽培産地を中心に約60haまで増加すると推定される。
  • その他:「おいCベリー」の種苗は、民間事業者から販売されている。炭疽病および萎黄病に対しては罹病性であるため、健全な親株から増殖するとともに、育苗期は炭疽病予防に努める。うどんこ病に対する抵抗性は中程度で発病が認められるため、通常の防除管理を行う。第一次腋果房の連続出蕾性がやや劣るため、頂果房において草勢に応じた適正果数管理を徹底し、過度の着果負担をかけないように留意する。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
  • 中課題整理番号:141f0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(ブランド・ニッポン)
  • 研究期間:2000~2014年度
  • 研究担当者:曽根一純、沖村誠、北谷恵美、木村貴志、飛川みのり、藤田敏郞
  • 発表論文等:曽根ら「おいCベリー」 品種登録22113 (2012年12月28日)