飼料用玄米の破砕粒度を細かくすることにより泌乳成績は向上する

要約

飼料用玄米の破砕粒度を粗挽き(粒度2mm以下の割合が全体の37.0%)または粉砕(粒度2mm以下の割合が73.3%)とし、発酵TMR中に乾物で20%混合して、泌乳中期の乳牛に給与すると、TMR摂取量は差が認められないが、乳量は粉砕玄米給与で高くなる。

  • キーワード:破砕玄米、破砕粒度、泌乳牛、泌乳中期、泌乳成績
  • 担当:自給飼料生産・利用・国産発酵TMR
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

飼料自給率の引き上げを目標に、水田や耕作放棄地を活用する稲発酵粗飼料、飼料用米等の生産拡大が推進されている。この中で、濃厚飼料源となる飼料用米の泌乳牛での利用においては、輸入トウモロコシを全量代替する給与技術の確立が急務となっている。飼料用米は全粒で牛に給与した場合、消化吸収率が非常に低くなるため、破砕等の加工をすることが必要である。しかしながら、飼料用玄米の破砕の程度が泌乳成績に及ぼす影響については、検討が不十分である。そこで、破砕粒度が異なる飼料用玄米を泌乳牛に給与して、飼料摂取量や消化性、泌乳成績に及ぼす影響を明らかとする。

成果の内容・特徴

  • 飼料米破砕機(チューブバックミル、型式CP1R、ヤンマー株式会社)を用いて破砕した飼料用玄米の粒度は、粗挽き玄米で粒度2mm以下の割合が全体の37.0%、粉砕玄米で粒度2mm以下の割合が全体の73.3%である。
  • 粗挽き玄米(粗挽き区)または粉砕玄米(粉砕区)を発酵TMRに乾物で20%混合して、泌乳中期の乳牛に給与した場合、TMR摂取量は粗挽き区と粉砕区で差が認められない(図1)。
  • 乾物消化率は粗挽き区で66.4%、粉砕区で69.1%となり、粉砕区で高くなる傾向にある(図2)。
  • 乳量は粗挽き区で31.9kg/day、粉砕区で34.3kg/dayであり、粉砕区で高くなる(図3)。乳成分は、玄米の破砕粒度の影響を受けない(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 泌乳中期の乳牛に破砕玄米を給与する際、粒度を決定するための基礎データとして利用できる。
  • 穀類は粒度を細かくすると、ルーメン内での分解が速くなるので、ルーメンpHが低下しやすくなる。粒度の細かい玄米を多給する際は、アシドーシスの危険性に留意する。
  • 本試験では、長期給与についての検討は行っていない。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:飼料用米等国産飼料を活用した発酵TMR の安定調製給与技術と広域流通システムの確立
  • 中課題整理番号:120c6
  • 予算区分:交付金、その他外部資金(受託試験)
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:神谷裕子、野中最子、田中正仁、服部育男、神谷 充、野中和久
  • 発表論文等:神谷ら(2014)日畜会報、85(4):495-502