遠赤色光の照射でダッタンソバスプラウトの果皮を除去する方法

要約

人工光を用いたダッタンソバのスプラウト生産において、果皮を効率的に除去するためには、胚軸が伸長して子葉の一部が見え始めた時期以降に、遠赤色光を照射することが有効である。

  • キーワード:完全人工光型植物工場、スプラウト、ダッタンソバ、光質制御、遠赤色光
  • 担当:日本型施設園芸・イチゴ等野菜周年生産
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、FAX:096-242-7769、TEL:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

現在、完全人工光型植物工場で栽培される品目はリーフレタスが大部分を占めており、品目の拡大が求められている。その候補の一つにスプラウトが挙げられ、ダッタンソバは有用成分であるルチンを豊富に含むことから、高付加価値なスプラウト品目として注目されている。しかし、ダッタンソバの果皮(種子の殻)は脱落しにくく、硬くて食味を損なうため、付着したままでは商品価値が下がる。そこで、人工光による光環境制御によって、ダッタンソバの果皮を効率的に除去する方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 異なる光質の照射条件については、遠赤色光の照射によってのみ子葉の展開が促進され(図1a)、果皮が除去される(表1)。
  • 暗所処理や白色蛍光灯の光強度の増加では、子葉の展開や果皮の除去は促進されない(図1b、c)。
  • 遠赤色光による果皮の除去は、発芽後に胚軸が伸長し子葉の一部が露出しはじめる生育ステージ(播種後3日目頃)以前の照射のみではみられず、それ以降で照射されている必要がある(図2、表2)。
  • 遠赤色光を同一期間照射する場合、植物体が成長した栽培後期のほうが、効果は大きい傾向がみられる(表2)。また、長期間照射するほど除去率は高くなる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果はダッタンソバを対象としており、他の品目についてはさらなる検討を要する。
  • 本試験は、浸種・消毒処理した種子を播種した後、気温25°C、相対湿度97%の暗所下で1日間催芽し、各光環境条件下で気温25°C、相対湿度75%で6日間栽培した。したがって、気温や湿度の影響についてはさらなる検討を要する。
  • 本試験で用いた遠赤色蛍光灯(FR-74、東芝ライテック(株))の遠赤色波長域は750nm付近をピーク波長とする。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:イチゴ等施設野菜の周年多収生産システムの開発
  • 中課題整理番号:141d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2013~2014年度
  • 研究担当者:北﨑一義、渡辺慎一、岡本章秀、松尾征徳、古谷茂貴、鮫島國親
  • 発表論文等:Kitazaki K. et al. (2015) Sci. Hortic. 185:167-174