北部九州地域でのアスパラガス無加温伏せ込み栽培の収量性

要約

北部九州の低標高地では、外張りと空気膜二重カーテンで三重被覆することにより無加温でのアスパラガス伏せ込み栽培が可能である。12月下旬の根株掘り上げ・伏せ込みにより、1月からの60日間で、株養成圃場10a当たり最大600kg程度の収量が見込める。

  • キーワード:アスパラガス、根株重、無加温、伏せ込み栽培、若茎収量
  • 担当:日本型施設園芸・イチゴ等野菜周年生産
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、FAX:096-242-7769、TEL:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

アスパラガスは10 月~2月の期間、国内生産量が少ないため輸入品が多くなっており、国内の主要卸売市場での国産品の単価は高い。そこで、この時期の生産を補完するため、北部九州低標高地の温暖な冬季気象条件を活用した無加温伏せ込み栽培における収量性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 播種期を1月とし、養成圃場に堆肥を施用し、支柱、マルチを設置して株養成を行うことにより、地上部、根株ともに大きな植物体を得ることができる(表1)。
  • 北部九州の低標高地では、掘り上げ・伏せ込み時期が早すぎる(11月下旬)と、大きい根株でも収量が低く、12月下旬に掘り上げ・伏せ込みを行うことにより若茎重が大きくなるとともに、若茎収量も高くなる(図1)。
  • 外張りと空気膜二重カーテンの三重被覆で保温することにより、冬季のハウス内夜温や最低気温を屋外よりも数°C高く維持することができ、アスパラガスの萌芽に必要な地温(平均15°C程度)を確保することができる(表2)。
  • 1月~2月播種、4月~5月定植、12月下旬の根株掘り上げ・伏せ込みの株養成期間で1500g以上、貯蔵根糖度20%以上の根株が得られ、1月上旬収穫開始の60日間で、株養成圃場10a当たり最大600kg程度の収量が見込める(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、北部九州の低標高地での活用を想定したものである。特に記載がない場合、本成果は福岡県久留米市(標高約30m)の株養成圃場および外張り+空気膜二重カーテンの三重被覆の伏せ込みハウスで得られたものである(3.の技術紹介パンフレット参照)。
  • 株養成時に病害虫の被害を受けた根株は収量が落ちるので本方法に用いない。
  • その他 発表論文等の1)を参照

具体的データ

図1,表1~3

その他

  • 中課題名:イチゴ等施設野菜の周年多収生産システムの開発
  • 中課題整理番号:141d0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2005~2014年度
  • 研究担当者:渡辺慎一、古谷茂貴、松尾征徳、前田昭一、井上勝広(長崎農林技術開発セ)
  • 発表論文等:
    1)九州沖縄農業研究センター (2011)「九州の温暖な気象条件を活用し冬季生産を可能にするアスパラガス伏せ込み栽培」
    http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/naro-se/aspara_info.pdf(2011年3月作成)
    2)Watanabe S. et al.(2014)JARQ.48(4):449-455