「シマカボチャ」に接ぎ木したセイヨウカボチャの高温下での生育と収穫果実重

要約

セイヨウカボチャ「黒皮デリシャス」を沖縄在来のニホンカボチャ「シマカボチャ」台木に接ぎ木すると、高温下での根の乾物重当たりの出液速度が高く、葉の相対含水率が高く維持される。その結果、高温下での生育が促進され、収穫果実重が大きくなる。

  • キーワード:カボチャ、高温、接ぎ木、生育、収穫果実重
  • 担当:日本型施設園芸・イチゴ等野菜周年生産
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、FAX:096-242-7769、TEL:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

セイヨウカボチャは、ウリ科野菜の中では比較的高温に弱く、気候温暖化による生産への悪影響が懸念される。一方、ニホンカボチャ、特に沖縄在来の「シマカボチャ」は高温下で旺盛に生育する。カボチャでの接ぎ木栽培は行われていないが、「シマカボチャ」を台木として接ぎ木することで、高温下でのセイヨウカボチャの生育を促進し、収量を増加させることができると推察される。
そこで、「シマカボチャ」台木への接ぎ木によるセイヨウカボチャの高温下での生育促進・増収効果とそれに関係する出液速度、相対含水率などの要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ニホンカボチャ「シマカボチャ」を台木として接ぎ木したセイヨウカボチャ「黒皮デリシャス」の高温下での根の乾物重当たりの出液速度は、「黒皮デリシャス」を台木としたものよりも高い(図1)。
  • 25/20(明/暗期、12/12 時間)°Cでは、「シマカボチャ」および「黒皮デリシャス」を台木として接ぎ木した「黒皮デリシャス」の葉の相対含水率に差はみられない(図2)。35/30°Cでは、「シマカボチャ」を台木とした「黒皮デリシャス」の相対含水率は、「黒皮デリシャス」を台木としたものの値よりも高い。
  • 「シマカボチャ」を台木として接ぎ木することで、「黒皮デリシャス」の高温下での主枝の伸長、葉の展開は促進される(図3)。
  • 高温下の栽培での「シマカボチャ」を台木として接ぎ木した「黒皮デリシャス」の個体当たりの着果数、平均1果実重は、「黒皮デリシャス」を台木としたものに比べ、有意差はないものの、大きい傾向がみられ、個体当たりの収穫果実重は「シマカボチャ」を台木としたもので有意に大きい(表1)。

成果の活用面・留意点

  • セイヨウカボチャを含めたウリ科野菜の接ぎ木による高温下での安定生産技術を開発するうえでの基礎的知見として活用する。
  • 本成果は、セイヨウカボチャ「黒皮デリシャス」を穂木、「黒皮デリシャス」とニホンカボチャ「シマカボチャ」を台木として得られた。異なる穂木と台木の組み合わせについては、さらなる検討を要する。
  • 接ぎ木は、断根・片葉切断接ぎにより行った。
  • 出液速度は根系の活性を示す指標として用いられ、穂木の胚軸の切断部からの午後4時から翌日午前10時まで出液量を測定し、根の乾物重当たりの出液速度を算出した。
  • 葉の相対含水率は、(リーフディスクの生体重-乾物重)/(同リーフディスクの水分を飽和させた重量-乾物重)×100から計算した。

具体的データ

図1~3,表1

その他

  • 中課題名:イチゴ等施設野菜の周年多収生産システムの開発
  • 中課題整理番号:141d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2014年度
  • 研究担当者:大和陽一、壇和弘
  • 発表論文等:大和、壇(2015)園芸学研究14(2):171-177