播種時期を選ばない暖地向けサイレージ用トウモロコシF1品種「PI2008」

要約

「PI2008」は暖地の春播きから晩播、夏播き栽培まで利用できるオールシーズン用品種で"中生の晩"に属する。南方さび病に抵抗性で耐倒伏性、折損抵抗性も強く、多収で使い勝手の良い品種である。

  • キーワード:トウモロコシ、南方さび病抵抗性、耐倒伏性、折損抵抗性、多収
  • 担当:自給飼料生産・利用・飼料作物品種開発
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

飼料用トウモロコシは多収で高栄養価であることから夏作自給飼料生産の基幹作物として、九州では2014年現在13,200haで栽培されている。温暖な気候を利用して、4月上旬から5月中旬にかけて播種する春播き栽培のほか、5月中旬から6月中旬に播種する晩播栽培、7月下旬から8月上旬にかけて播種する夏播き栽培が行われており、それぞれに必要な特性を備えた品種が作付けされている。しかし、春播きから晩播への移行時期は年によって異なり品種の選定が難しい。そこで、春播きから夏播きまですべての播種時期に利用できる品種の育成を目標とする。

成果の内容・特徴

  • 「PI2008」は、九州沖縄農業研究センターが育成した「Mi91」を種子親とする単交雑一代雑種で、九州沖縄農業研究センターと雪印種苗株式会社との共同育成品種である。
  • 絹糸抽出期は晩生の「SH9904」に近く、中生の「SH3815」より3日程度遅い。収穫時熟度は同じ収穫期の「SH9904」とほぼ同じであるが、収穫物全体の乾物率は「SH9904」より高くサイレージ調製に適した乾物率に早く到達する。早晩性は「SH3815」より遅く「SH9904」より早い"中生の晩"に属する(表1)。
  • 乾物収量は「SH9904」より多く乾物中の雌穂重割合も「SH9904」より高い。春播き及び晩播栽培では、乾物収量は「SH3815」並かやや多く、乾物中の雌穂重割合は「SH3815」並かやや低い。夏播き栽培では、乾物収量および乾物中の雌穂重割合は「30D44」と同程度である(図1)。
  • 南方さび病抵抗性は、「SH3815」、「SH9904」及び「30D44」より強い(表2)。
  • 耐倒伏性は夏播きでは「30D44」より強い。折損抵抗性は春播き及び晩播では「SH3815」及び「SH9904」より強く、夏播きでは「30D44」より強い。その結果、倒伏及び折損抵抗性は春播き及び晩播では「SH3815」及び「SH9904」より強く、夏播きでは「30D44」より強い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 暖地の春播きから晩播、夏播きまですべての栽培時期に利用できる。
  • ワラビー萎縮症抵抗性は弱いので、ワラビー萎縮症が発生する地域での8月播種は避ける。
  • 販売名は"スノーデントおとは"で雪印種苗から販売されている。

具体的データ

その他

  • 中課題名:水田・飼料畑・草地の高度利用を促進する飼料作物品種の育成
  • 中課題整理番号:120b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2014年度
  • 研究担当者:村木正則、橋爪健(雪印種苗)、高橋穣(雪印種苗)、原本典明(雪印種苗)、野宮桂(雪印種苗)、伊東栄作
  • 発表論文等:村木ら「トウモロコシ「PI2008」」 品種登録出願第30272号 (2015年6月19日)