クラウン温度制御技術による宮城県被災地でのイチゴ促成栽培における収量増加

要約

寒冷地の宮城県におけるイチゴ促成栽培でも、クラウン部の温度を20°C前後に維持するクラウン温度制御技術により、低温期の生育促進と、出葉、ならびに第1および2次腋果房の出蕾が早まることで、総商品果収量は多くなる。

  • キーワード:イチゴ促成栽培、クラウン温度制御、商品果収量、宮城県、「もういっこ」
  • 担当:日本型施設園芸・イチゴ等野菜周年生産
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

東北地方最大のイチゴ産地であった宮城県亘理郡亘理町および山元町は、東日本大震災によって壊滅的な被害を受けた。その後、大規模なイチゴ生産団地が再建されたが、生産性を向上させる効果的な栽培管理技術の導入が望まれている。一方、九州などの西南暖地におけるイチゴの促成栽培では、クラウン部の温度を20°C前後に維持するクラウン温度制御技術の有効性が示されている。そこで、山元町に建設された農林水産省先端プロ大規模施設園芸実証研究施設において、宮城県における促成栽培イチゴの生育促進および収量増加に対するクラウン温度制御技術の有効性を実証する。

成果の内容・特徴

  • クラウン部の温度を20°C前後に維持するクラウン温度制御を行うことで、低温期の生育が促進される(図1)。
  • クラウン温度制御により、1月から2月の出葉は早くなる(図2)。
  • 頂果房から第1次腋果房の果房間葉数は少なくなり、第1次腋果房の出蕾は早くなる。また、1月から2月の出葉が早くなるため、第2次腋果房の出蕾も早くなる(図3)。
  • 腋果房の出蕾が早まるとともに、加温の効果により低温期の生育が促進されることで、4および5月の商品果収量が増加し、総商品果収量は多くなる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 図1~4は、先端プロ大規模施設園芸実証研究施設イチゴ栽培区画(面積23.8a)の高設栽培システムに一季成り性品種「もういっこ」の普通ポット苗を2013年9月24日に定植して(約8,000株/10a)、実証栽培を行った際の結果である。
  • クラウン温度制御を行うために、空冷式ヒートポンプチラー(10馬力)と冷温水の貯水タンク(1,000L)を循環ポンプ(0.25kW)で接続し、クラウン部の温度制御用ポリエチレンチューブ(外径16mm)に送水ポンプ(0.4kW)で冷温水を循環供給した。定植から10月22日、ならびに3月1日から5月31日まで、貯水タンクの水を18°Cに冷却し、気温20°C以上で送水した。11月1日から3月1日まで、貯水タンクの水を23°Cに加温し、気温18°C以下で送水した。
  • クラウン温度制御については、2007年度普及成果情報「促成イチゴ栽培で早期収量の増加と収穫の平準化が可能なクラウン温度制御技術」を参照する。

具体的データ

その他

  • 中課題名:イチゴ等施設野菜の周年多収生産システムの開発
  • 中課題整理番号:141d0
  • 予算区分:その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2012~2015年度
  • 研究担当者:壇和弘、菅野亘(専任研究員)、中原俊二、後藤直子(専任研究員)、岩崎泰永、高野岩雄(宮城農園研)、沖村誠、日高功太、高山智光、今村仁
  • 発表論文等:壇ら(2015)九州沖縄農研報、64:1-11