国頭マージ土壌における耕耘同時畝立て播種技術によるソバの湿害回避

要約

沖縄本島北部に広く分布する国頭マージ土壌において、アップカットロータリを用いた耕耘同時畝立て播種技術により、ダウンカットロータリを用いた耕耘播種一工程の慣行栽培に比べて土壌の体積含水率は低くなり、ソバの生育および収量が改善される。

  • キーワード:ソバ、湿害、国頭マージ、畝立て同時播種、アップカットロータリ
  • 担当:総合的土壌管理・暖地畑土壌管理
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

沖縄県においては従来ソバの栽培は行われていなかったが、温暖な気候を生かして近年その作付面積が増加している。またソバはパインアップル、サトウキビ等との輪作体系の確立が有望視されており、強酸性土壌である国頭マージにおいて、家畜ふん堆肥施用によりソバの生育が顕著に改善することが報告されている。しかし、国頭マージが分布する沖縄本島北部では生育不良が問題となる圃場が散見される。ソバは湿害に弱く、重粘土で排水性が悪化しやすい国頭マージでは、湿害も生育不良の一因と考えられる。重粘土における湿害軽減技術では、アップカットロータリを用いた耕耘同時畝立て播種技術(以下、畝立て同時播種)の有効性が示されている。そこで、国頭マージにおけるソバ栽培において、畝立て同時播種が土壌物理性とソバの生育および収量に及ぼす影響について検証する。

成果の内容・特徴

  • ソバの生育不良が観察される、農家慣行栽培の国頭マージの圃場においては、収穫時の土壌体積含水率が高い地点ほどソバの草丈、被覆率がともに低い(図1)。
  • 国頭マージの圃場においてアップカットロータリを用いた畝立て同時播種栽培を行うと、ダウンカットロータリを用いた耕耘播種一工程の慣行栽培にくらべて収穫時の液相率(体積含水率)は低く、気相率は高くなる(表1)。
  • 畝立て同時播種栽培を行った場合、慣行栽培に比べて生育初期のソバの個体数には統計的には差は無いが収穫時の個体数、茎葉重、子実収量、千粒重は有意に高い(表2)。特に千粒重は生育後半の過湿で低下することが知られている。畝立て同時播種栽培は生育後半のソバの湿害回避にも有効である。

成果の活用面・留意点

  • 耕耘同時畝立て播種技術はトラクタの進行方向と逆回転のアップカット(逆転)ロータリを用い砕土率を向上させるとともに、耕うん爪の配列を変更することで、一工程で耕うんと平高畝を作成可能な構造とした上、後方に施肥・播種機を取り付け、耕うんと同時に畝立てと施肥・播種を一工程で行うことができる技術である。本試験は、施肥・播種を表層散播機で行った結果である。播種機の詳細は特許第5397954号に準じ、表層散播機は佐藤商会から市販されている。
  • 本湿害回避技術は湿害が問題となる国頭マージ以外の重粘土においても適用が期待できる。

具体的データ

その他

  • 中課題名:暖地畑における下層土までの肥沃評価と水・有機性資源活用による土壌管理技術の開発
  • 中課題整理番号:151a3
  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2010~2015年度
  • 研究担当者:山口典子、原貴洋、土屋史紀、手塚隆久、小林透、田坂幸平、田中章浩
  • 発表論文等:
    1)山口ら(2015)土肥誌、86(3):198-201
    2)土屋ら「耕耘同時施用機」 特許第5397954号 (2013年11月1日)