Fusarium asiaticumのかび毒(3A-DON)産生誘導、促進因子

要約

穀類赤かび病菌Fusarium asiaticumの液体培地中での3アセチルデオキシニバレノール(3A-DON)産生は、スクロース(炭素源)によって強く誘導され、アミン類(窒素源)のうち特にプトレスシンによって大きく促進される。

  • キーワード:Fusarium asiaticum、赤かび病、デオキシニバレノール(DON)、スクロース、アミン
  • 担当:食品安全信頼・かび毒リスク低減
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

コムギやトウモロコシなどの穀物に赤かび病菌が感染すると収量や品質が低下するとともに、人畜に有害なデオキシニバレノール(DON)等のかび毒が蓄積する。赤かび病菌のかび毒産生に関しては、Fusarium graminearum s. str.のDON産生誘導因子としてスクロース(炭素源)やアグマチン、プトレスシンといった植物に含まれているアミン類(窒素源)が、F. verticillioidesのフモニシン産生誘導因子としてアミロペクチン(炭素源)が知られている。そこで、関東以西で主な赤かび病菌であるF. asiaticum のかび毒産生誘導に対する炭素源、窒素源の影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • DON産生型F. asiaticumを液体培養すると菌体生育量は炭素源の種類に影響を受けない一方、スクロース、フルクトオリゴ糖(1-ケストース、ニストース)でDONおよび3アセチルDON(3A-DON)産生量が極めて多い(図1)。また、DON産生量に比べ3A-DON産生量が多い。上記のフルクトオリゴ糖は、スクロースにフルクトースが結合した3および4糖類である。
  • スクロースの構造異性体であるツラノース、マルツロース、パラチノースを炭素源として培養すると、スクロースの場合に比べ3A-DON産生は著しく少ない(図2)。
  • スクロースを炭素源として前培養後にマルトースを炭素源として再培養するとスクロースの場合に比べ3A-DON産生が著しく低下する(図3)。このことから、3A-DON産生誘導の継続にもスクロースが係わることが示唆される。
  • スクロースを炭素源とした培養液では窒素源の種類によらず3A-DON産生が誘導され、アミン類、特にプトレスシンを窒素源とした場合に3A-DON産生が促進される(図4)。
  • F.asiaticumの3A-DON産生は、スクロースが誘導因子、アミン類(特にプトレスシン)が促進因子として作用する。

成果の活用面・留意点

  • ニバレノール(NIV)産生型
  • F. asiaticum
  • の4A-NIV産生に関しても上記と同様の結果が得られている。
  • 赤かび病菌のかび毒産生誘導機構の解明に資する知見となる。
  • 感染作物内でのかび毒産生誘導に関してはさらに解析を進める必要がある。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:かび毒産生病害からの食品安全確保技術の開発
  • 中課題整理番号:180a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2014年度
  • 研究担当者:川上顕、笹谷孝英、宮坂篤、井上博喜、中島隆、平八重一之
  • 発表論文等:Kawakami A. et al. (2014) FEMS Microbiol. Lett. 352:204-212