パリセードグラス「MG5」のミナミネグサレセンチュウ増殖抑制効果

要約

パリセードグラス「MG5」ではミナミネグサレセンチュウRFLP-A型、B型の増殖性が低い。ミナミネグサレセンチュウA型の汚染圃場でパリセードグラス「MG5」を約4ヶ月間栽培した後の土壌線虫密度は、裸地休閑よりも低いか同程度である。

  • キーワード:Brachiaria brizantha、Pratylenchus coffeae、サツマイモ
  • 担当:気候変動対応・暖地病害虫管理
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

パリセードグラス(Brachiaria brizantha)品種「MG5」は、栄養価や嗜好性に優れた新規の夏作飼料作物であり、永年性牧草や単年作牧草としての利用に向けて研究が進められている。本草種は優良な飼料作物であることに加え、九州で重要なサツマイモネコブセンチュウ、ミナミネグサレセンチュウ両種の増殖を抑制することが知られており、線虫抑制作物としての効果も期待される(2010年研究成果情報)。しかし、これら2線虫に関する知見のうち、ミナミネグサレセンチュウについては、線虫1個体群を用いたポット試験の結果が報告されているに過ぎない。本研究では、パリセードグラスにおけるミナミネグサレセンチュウの増殖性をより詳細に検討するとともに、複数年の圃場栽培試験によりミナミネグサレセンチュウ増殖抑制効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • パリセードグラス「MG5」におけるミナミネグサレセンチュウの増殖性は、九州に分布するRFLP-A型(サツマイモに寄生する)、B型(サツマイモに寄生しない)のいずれも低い(図1)。
  • 「MG5」根内へはミナミネグサレセンチュウRFLP-A型の幼成虫の侵入が認められるが、産卵数が少ない(図2)。既報のネグサレセンチュウ抑制性セイヨウチャヒキ(エンバク野生種)と同様、根内に産下される卵が少ないことが線虫の増殖抑制に関与していると考えられる。
  • 「MG5」を約4ヶ月栽培した後のミナミネグサレセンチュウRFLP-A型の密度は、裸地休閑よりも低いか同程度であり(図3、4)、後作サツマイモの被害程度も裸地休閑と同程度である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • パリセードグラス「MG5」は、九州低標高地では単年生夏草、南西諸島では永年生夏草に適する暖地型牧草である。
  • 図2~図4の結果は、ミナミネグサレセンチュウRFLP-A型を供試して得たものであり、B型の根内への進入・産卵や圃場での増殖抑制効果は未検討である。また、栽培期間や播種法などパリセードグラスの栽培条件、線虫の初期密度条件により、増殖抑制効果は変わる可能性がある。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:暖地多発型の侵入・新規発生病害虫の発生予察・管理技術の開発
  • 中課題整理番号:210d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:上杉謙太、立石靖、岩堀英晶
  • 発表論文等:Uesugi K. et al. (2015) Nematology 17(4):425-432