サツマイモ「すいおう」葉身のカフェオイルキナ酸量はアクアガス加熱で保持できる
要約
サツマイモ品種「すいおう」葉身の7種のカフェオイルキナ酸類の含量はいずれも、アクアガス加熱5分間処理が茹で加熱を上回る。葉身のポリフェノールオキシダーゼは、アクアガス加熱5分間処理でほぼ失活する。
- キーワード:サツマイモ葉身、ポリフェノール、カフェオイルキナ酸、アクアガス、すいおう
- 担当:食品機能性・代謝調節利用技術
- 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
- 研究所名:九州沖縄農業研究センター・作物開発・利用研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
茎葉利用サツマイモ品種「すいおう」は、葉身部のえぐみが少なく、ミネラル類、ビタミン類だけでなくポリフェノールであるカフェオイルキナ酸類(CQAs)が豊富であることから、各種メニューが開発され、青汁等の加工品の原料としても使用されている。
調理や加工で頻用される加熱は、不適切であるとポリフェノールオキシダーゼ等の作用による品質の劣化につながる。アクアガス加熱は、高温の微細水滴を含む常圧の過熱水蒸気雰囲気での加熱法であり、ブロッコリー、ジャガイモ等において、物性向上、酵素失活、ビタミンC保持等の点で、通常の過熱水蒸気加熱や溶媒(水)に浸す茹で加熱に優ることが示されている。サツマイモ葉身については実施例がないことから、品種「すいおう」に対して本加熱法を適用し、茹で加熱と比較することでその有用性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 「すいおう」葉身の温度はアクアガス加熱開始直後から急速に上昇し,10秒間で90oC 、30秒間で95oCに到達する(図1)。
- 「すいおう」葉身のポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性は、アクアガス加熱5分間処理で約99%失活する(図2)。
- 「すいおう」葉身抽出液の褐変度は、アクアガス加熱5分間処理で約38%に低下する(具体的データ省略)。
- アクアガス加熱5分間処理後の「すいおう」葉身中のカフェ酸および7種のカフェオイル酸類の含量は、茹で加熱で同一時間処理した葉身と比較して有意に多い(図3)。
成果の活用面・留意点
- アクアガス加熱はサツマイモ葉身の加工におけるブランチング等の加熱工程において、茹で加熱よりもポリフェノール量を高く維持することが可能な方法である。
- 市販のアクアガス加熱装置でも本研究と同様の加熱処理が可能である。
- アクアガス加熱技術は、農研機構等により特許が取得されている(特許第4336244号等)。
具体的データ

その他
- 中課題名:代謝調節作用に関する健康機能性解明と有効利用技術の開発
- 中課題整理番号:310b0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2015年度
- 研究担当者:佐々木一憲、五月女格、岡留博司、甲斐由美、沖智之、奥野成倫
- 発表論文等:佐々木ら(2016)食科工、63(2):86-92