特殊用途向水稲紫黒糯系統「関東糯182号」の育成
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要約
水稲「関東糯182号」は、中国の紫黒糯の2次選抜によって育成された、インド型の紫黒糯系統である。「ホシユタカ」並みの晩生に属し、糠層にアントシアン色素が集積して、玄米は黒色を呈する。赤飯、赤餅、ライスプリンなど、その色素を利用した加工食品に適応性が高い。
- 担当:農業研究センター・作物開発部・稲育種研究室
- 連絡先:0298-38-8950
- 部会名:作物生産
- 専門:育種
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
各種食品に対する品質や消費者ニーズの多様化の中で、米に対しても素材の多様性や機能性を求める傾向があり、色素米に対する要望も強い。中国では古代よ
り色素米を珍重しており、現在では人体に対する生理化学的、医学的な面からの基礎的研究が進められ、また各種加工米飯や、加工製品への利用法の研究がなされている。
成果の内容・特徴
- 「関東糯182号」は、1987年に農業研究センターで、中国の紫黒糯からの2次選抜を開始し、その後代から育成された紫黒糯系統である。
- 出穂期は「ホシユタカ」、「ユメヒカリ」並の晩生に属する。
- 成熟期の草型、稈長・穂長などは半矮性改良インド型の特徴を示す、短稈、強稈の穂重系統である。
- 各生育期の耐冷性は弱く、また、最高分げつ期頃の生育中期には生理障害とも見られる症状を呈し、植物全体が黄化し生育も一次停滞することがある。また、登熟期の低温では脱粒し易くなる。
- 玄米は長粒で、糠層にアントシアン色素が集積しており、黒色を呈する。色素量が多く、赤飯、赤餅、天然色ライスプリン、水飴など、その色素を利用した加工食品に適応性が高い。
- いもち病に対しては、未知の抵抗性遺伝子をもち、現在のところ圃場での罹病はみられない。
成果の活用面・留意点
- 適応地帯は関東以西の早期・早植栽培及び近畿以西の早期・早植、普通栽培地帯である。晩植栽培には適さない。
- 幼苗期、幼穂形成期及び減数分裂期の耐冷性は弱い。
- 育成中期に稲全体が黄化する特性がある。
- 現在、これを侵すいもち病菌はないが、侵害菌の発生の可能性がある。
- 一般の頴色と異なるため成熟期の判定がやや難しい。
具体的データ

その他
- 研究課題名:温暖地東部向き新形質・超多収品種の育成
- 予算区分 :経常・新形質米
- 研究期間 :平成6年度(昭和62年~平成6年)