草型の異なる水稲品種のコナギとノビエに対する生育抑制効果

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要約

草型の異なる水稲品種の中で、雑草に対する競合性に違いが認められ、生育初期の葉面積が大きい「麗江新団黒谷(れいこうしんだんこくや)」、「南京11号」はコナギに対して生育抑制の効果が大きい。また、ノビエに対しては草丈が大きい「麗江新団黒谷」、「Tadukan」の生育抑制の効果が大きい。

  • 担当:農業研究センター・作物開発部・稲育種研究室 耕地利用部・水田雑草研究室
  • 連絡先:0298-38-8950 38-8953
  • 部会名:作物生産
  • 専門:育種・雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水稲栽培では、稲と雑草の関係は極めて重要な問題であり、雑草防除は欠くことができない作業の一つである。作業の効率化、環境保 全を求める要求は強く、育種的な対応で除草剤をできるだけ減らす方向が重要である。しかし、稲と雑草の競合に品種間でどの程度差があるかの研究は少ない。 そこで、草型の異なる水稲品種の日本晴(日本の一般的草型、標準)、南京11号(穂重型で株が開く草型)、Tadukan(典型的な穂数型)、麗江新団黒 谷(草丈が長い穂重型)の4品種と、代表的な水田雑草であるコナギ(田面の横に広く広がる一年生雑草)及びノビエ(縦に伸長する一年生雑草)がどのように 競合するのか、その種間差異を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • コナギと競合する条件では、麗江新団黒谷、南京11号及び、Tadukanは日本晴よりコナギとの競合に勝り、その結果、コナギの生育が抑制される(図1)。これらの品種では、生育初期の葉面積が大きく群落内の相対照度が小さくなるためである。(図3、表2)。一方、麗江新団黒谷と南京11号はコナギによる茎数の低下を示さないが、Tadukanは日本晴と同様に低下するため競合性は小さい(表2)。
  • ノビエと競合する条件では、麗江新団黒谷、Tadukan、南京11号、日本晴区の順にノビエに対する生育抑制の効果が大きい(図2)。これは、コナギにみられた葉面積の効果に加え、草丈が高いことが関与している(図4)。
  • 初期生育の早さ、初期葉の開張、後次葉の直立化、葉幅・葉面積の拡大などの形質が雑草の抑制効果と関係することが解明され、これらは新しい育種目標の一つとなる。(表1)

成果の活用面・留意点

  • 品種育成では、初期生育はあまり重要視されてこなかったが、雑草との競合性を考慮した場合の選抜の指標となる。
  • 草丈の高い品種は、ノビエにもコナギにも競合性が強いが、実用品種にこのような特性を導入するにあたっては更に検討が必要である。

具体的データ

図1 コナギの乾物重の推移

図2 ノビエの乾物重の推移

図3 コナギ区の葉面積の推移

図4 ノビエ区の草丈の推移

表1 品種特性表

表2 水稲の除草区に対するコナギ区の生育量の比較比率及びコナギ区の相対照度

その他

  • 研究課題名:温暖地東部向け優良品種の育成
  • 水稲の栽培様式に応じた好適雑草防除技術
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平3~6年)
  • 平成6年度(昭63~平6年)
  • 発表論文等:水稲品種のコナギ(1年生広葉雑草)に対する競合性、育種学雑誌、
                      第44巻・別1号、1994
                      水稲の品種間におけるコナギとの競合性の差異、雑草研究、第39巻、
                      別号?、1994