キヌヒカリの耐倒伏性と下部節間における節間重/節間長比
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要約
キヌヒカリはコシヒカリと比較して稈長が短く、稈長に対する下部(N3+N4)節間の比率も低かった。キヌヒカリの下部節間の節間重/節間長比は年次を通じて高く安定しており、これが耐倒伏性に優れることの一要因であると考えられる。
- 担当:北陸農業試験場・水田利用部・栽培生理研究室
- 連絡先:0255-26-3241
- 部会名:作物生産
- 専門:栽培
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
キヌヒカリは短稈・良食味の中生品種として福井、茨城の両県で奨励品種に採用されて依頼、作付面積が拡大しており平成5年度の奨励品種採用県は21県、
面積は43,400haに達している。キヌヒカリが普及した理由の一つとして耐倒伏性に優れることがあげられるので、その要因を明らかにするため、節間の
長さと重さに着目してコシヒカリと対比しながら出穂期から成熟期にかけての推移と、その年次間差異を検討した。
成果の内容・特徴
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下部の節間長は出穂期前に決定されると言われていたが、極端な低温(平成5)年や高温(平成6)年では出穂期後でもN3,N4節間の伸長が認められた。N4節間長の年次間変動は両品種ともに、他の節間長の変動よりも大きかった(表1)。
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成熟期におけるキヌヒカリの節間長は、N0~N4の各節間ともコシヒカリより2~3cm短かった。稈長に対する下部(N3+N4)節間の比率はコシヒカリの20%に比較し、キヌヒカリでは17%と低かった(表1)。
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キヌヒカリの節間重はコシヒカリより小さい場合もあるが、節間重/節間長比は高かった。とくにコシヒカリの倒伏が出穂後20日頃から「多」となった平成3年と、低温・寡照で乾物生産量が少なかった平成5年では品種間差が大きくなった(図1)。
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稈に蓄積された澱粉が穂に転流するので、通常の年次の節間重/節間長比は登熟期間中に一旦減少し成熟期に再び増加するが、平成3年のコシヒカリでは成熟期での再蓄積がみられず、また、平成5年の両品種の再蓄積量は僅少であった(図1)。
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平成3~6年の圃場における倒伏程度(0~5)の平均値は、コシヒカリが4.3で「多~甚」だったのに対し、キヌヒカリは0.4と軽微であった(図1)。
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以上のように、キヌヒカリは短稈で下部節間の節間重/節間長比が高く、これが耐倒伏性に優れる一つの要因であることを形態的な面から明らかにした。
成果の活用面・留意点
節間長、節間重ともに環境条件によって変動し易く、また、節間長は同一株内でも止葉葉数との関連で変化する。こうした点に留意しながら材料を採取し(表1の注参照)、節間重/節間長比を耐倒伏性強化のための一指標として活用する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:高品質米生産における生育制御技術の確立
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成6年度(平成2~6年)
- 発表論文等:水稲の節間充実度と倒伏との関係、北陸作物学会報、28号;
25-27、1993.