乾燥牛糞によるダイズシストセンチュウの孵化促進と密度制御効果
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要約
乾燥牛糞は、ダイズシストセンチュウに対する孵化促進効果を有し、汚染土壌への施用後ただちにだいずを播種すると、だいずへの雌成虫の着生は顕著に増大する。しかし、乾燥牛糞の施用後一定の期間をあけてだいずを播種すると着生数が激減することから、同線虫の密度制御に乾燥牛糞が利用可能なことが明らかになった。
- 担当:農業研究センター・耕地利用部・作付体系研究室
- 連絡先:0298-38-8504
- 部会名:生産環境、作物生産
- 専門:作物虫害、栽培
- 対象:豆類
- 分類:研究
背景・ねらい
土壌への有機物の施用は、一般に線虫密度の増加を抑制し、作物被害を軽減するとされ、従来その機作は、・線虫の移動・行動の阻
害、・天敵微生物および自活性線虫の増殖、・分解産物の殺線虫効果、・作物の線虫抵抗性の向上、・植物の生育促進等とされてきた。当研究室では、乾燥牛糞
の化成肥料代替の可能性について検討する中で、乾燥牛糞施用条件でだいずへの顕著な雌成虫の着生を認めた。そこで、雌成虫着生数の増大の原因を明らかにす
るとともに、乾燥牛糞施用によるダイズシストセンチュウ密度への影響について新たな視点から検討した。
成果の内容・特徴
- ダイズシストセンチュウの低汚染土(シスト密度;50個/kg乾土、以下汚染土)に乾燥牛糞(熱風乾燥物)を施用し、ただちにだいずを播種すると、雌成虫着生数は化成肥料施用や無肥料に比べ顕著に増加する(表1)。また、雌成虫着生数は、乾燥牛糞の施用量の増大に伴って増加する傾向にある。
- 汚染土に乾燥牛糞を施用すると、だいずの有無にかかわらず孵化が促進され、土壌中の第2期幼虫数が顕著に増加する(表2)。
- 乾燥牛糞の汚染土壌への施用からだいず播種までの期間が長くなるにつれて、その後の雌成虫着生は急激に減少する。雌成虫着生数の減少は、乾燥牛糞施用からだいず播種までの期間の温度が高いほど速やかである(図1)。
- これらのことから、乾燥牛糞によるダイズシストセンチュウの孵化促進効果と宿主(だいず)不在による餓死を利用した同線虫制御の可能性を明らかにした。
成果の活用面・留意点
- 乾燥牛糞施用下でのだいず栽培におけるダイズシストセンチュウ被害回避の情報となる。
- 土壌中で長期間の生存が可能な同線虫の密度低下の耕種的方策として応用が可能である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:家畜由来有機物を活用した作付体系の策定
- 予算区分 :一般別枠(物質循環)
- 研究期間 :平成6年度(平成4~10年)
- 発表論文等:Effects of application of dried cattle feces on population
dynamics of the soybean cyst nematode(Heterodera glycines
ICHINOHE)1. Number of second stage juveniles in the soil and
female adults on the soybean roots. Jpn. J. Nematol. 24(2),
69-74,1994