分光反射係数を用いたギニアグラスの飼料成分含量の推定

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要約

群落の分光反射係数を測定し、可視光域の反射係数、反射係数比や可視光域および近赤外光域における反射係数の一次微分係数を用いたときギニアグラスの粗蛋白質含量、繊維成分含量との間に高い相関係数が得られた。このことより立毛段階での飼料成分含量の推定に分光反射係数を利用できることが示唆された。

  • 担当:農業研究センター・耕地利用部・家畜導入研究室
  • 連絡先:0298-38-8532
  • 部会名:作物生産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

乳牛への粗飼料供給源として利用拡大が期待される暖地型牧草ギニアグラス(ナツカゼ)について粗蛋白質および繊維成分含量が立毛段階で迅速かつ簡易に推定できることをねらいとして、圃場における分光反射係数と粗蛋白質含量、繊維成分含量との関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ギニアグラス(ナツカゼ)の粗蛋白質と繊維成分含量を推定するために出穂前から開花期の153波長(280nm~1800nm;92年度と93年 度の34データ)について群落の反射係数を検討したところ、粗蛋白質含量では、420nm、680nmの反射係数比、粗繊維含量では、540nm、 620nm、1710nmの一次微分係数を用いたとき高い相関係数が得られた(表1)。
  • 92、93年の両年度に得られた34データからランダムに選んだ29データを用い、表1で有効と考えられた波長の反射係数により推定回帰式(キャリブレーション)を作成した(表2)。推定回帰式の相関係数は、粗蛋白質含量で-0.71、粗繊維含量、酸性デタージェント繊維含量、中性デタージェント繊維含量の順にそれぞれ0.72、0.53、0.62となり、1%水準で有意であった(表3)。
  • 推定回帰式の作成に用いなかった残りの5データによって回帰式の推定精度を検定(バリデーション)したところ、粗蛋白質含量、粗繊維含 量、酸性デタージェント繊維含量の相関係数と標準誤差は、r=0.87~0.88、Se=2.2~3.7となったが、中性デタージェント繊維含量では、 r=0.57、Se=7.4であった(表3)。これらから飼料成分含量の推定に分光反射係数を利用できることが示唆された。

成果の活用面・留意点

  • 作物の化学成分含量の立毛段階における評価手法の開発に有効な基礎的情報となる。
  • 分光反射係数は、マルチスペクトルラジオメーターを用いて光強度変化の少ない晴天日の10~14時頃に、群落上1mの高さから測定する。
  • ギニアグラス(ナツカゼ)以外の草種・品種や耕種基準と異なる無施肥条件等で群落上部より地表面が見えるような場合への適用については、別途、検討が必要である。

具体的データ

表1 ギニアグラスの粗蛋白質と繊維成分含量の推定に使用した波長とその相関係数

表2 分光反射係数を用いたギニアグラスの粗蛋白質と繊維成分含量推定回帰式

表3 分光反射係数を用いたギニアグラス粗蛋白質および繊維成分含量の推定値と実測値の関係

その他

  • 研究課題名:暖地型牧草における繊維成分の新評価法の開発
  • 予算区分 :総合的開発研究(高品質輪作)
  • 研究期間 :平成6年度(平成4年~5年)