ソバの網室隔離採種における花粉媒介昆虫アルファルファハキリバチの利用

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要約

牧草で利用されているアルファルファハキリバチは虫媒他殖性作物であるソバの網室隔離採種に必要な花粉媒介昆虫として、収量性・経済性・安全性に優れており、従来用いられてきたミツバチに代用できる。

  • 担当:北陸農業試験場・作物開発部・畑作物育種研究室
  • 連絡先:0258-82-2311
  • 部会名:作物生産
  • 専門:育種
  • 対象:雑穀類
  • 分類:研究

背景・ねらい

虫媒他殖性作物であるソバの品種・系統の維持・増殖には花粉媒介昆虫を利用した網室隔離採種が不可欠である。従来はミツバチが利用されてきたが、利用単 位が1巣箱(500~1,000頭)と頭数が多すぎて小規模網室採種を多数行う場合には不経済であること、安全性に問題があることなどから、新しい花粉媒 介昆虫の導入が望まれていた。そこで、アルファルファハキリバチを含む購入可能な数種の花粉媒介昆虫を用いて導入の可能性を検討した。

成果の内容・特徴

  • 4種の花粉媒介昆虫の利用性を、ソバの簡易採種網室内(2×2.5m,寒冷紗白#300)での結実程度から比較したところ、経済性・安全性・労力的負担の点でアルファルファハキリバチが有望であることが明らかとなった(表1)。
  • アルファルファハキリバチの必要頭数は、年次・栽培期による変動はあるが、1m2あたり雌6頭、雄12頭放飛すればミツバチと比較しても安定した採種量が得られた。なお、網室の大きさは5m2、栽植密度は約100本/m2とした(表2)。
  • ソバのような他殖性作物の系統維持においては集団内で無作為交配が行われることが望ましい。そこで、ソバが異型花柱個体間の受粉でのみ結実することを利 用し、畦端に短花柱個体、他は長花柱個体として、アルファルファハキリバチによる花粉流動範囲を調査したところ、夏栽培の方の花粉流動量が多く、ミツバチ に比べると流動量が少ないが、1m2あたり雌6頭、雄12頭放飛すれば集団内で均一な交配がなされることが示唆された(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 今後、最適栽植密度など検討する必要はあるが、ソバの網室隔離採種に花粉媒介昆虫としてアルファルファハキリバチが利用でき、系統の維持・増殖に有効な採種方法が確立される。
  • アルファルファハキリバチの行動は気温など環境に左右されるため、さらに増頭や補充を検討する必要がある。
  • アルファルファハキリバチの羽化及び寄生蜂の除去のため低温機・恒温機など機器を要する。
  • アルファルファハキリバチ購入時に添付される手引きに従った寄生蜂の除去を行う。

具体的データ

表1 ソバの網室隔離採種における花粉媒介昆虫の種類と採種効率

表2 アルファルファハキリバチの放飛頭数とソバの採種量

図1 アルファルファハキリバチの放飛頭数と花粉流動距離

その他

  • 研究課題名:花粉媒介昆虫利用によるそばの効率的採種方法に関する研究
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成5年~6年)