近赤外分光法による小麦粉体蛋白質含量の評価法
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要約
小麦の蛋白質含量を育種現場適応性の高い近赤外分光法により粉体試料で簡易・迅速に測定するための検量線作成とそのための試料保存条件・粉砕条件・化学分析精度および近赤外分光測定条件などの留意点を明らかにした。
- 担当:農業研究センター・作物生理品質部・麦品質評価研究室
- 連絡先:0298-38-8942
- 部会名:作物生産
- 専門:育種
- 対象:麦類
- 分類:研究
背景・ねらい
小麦は、用途によって適性な蛋白質含量がある。このため、品種育成上や穀物検査の段階で蛋白質含量を簡易・迅速かつ精度の高い評価法が必要である。そこで、近赤外分光法による評価法を開発する。
成果の内容・特徴
- 全国の育成地および食糧事務所から分譲を受けた小麦100品種・系統からなる3か年のスペクトルデータを総合して、小麦粉体蛋白質含量を測定する
ための検量線を作成した。蛋白質に帰属する2180nm近傍と澱粉に帰属する2100、2500nm近傍の吸収波長および1680、2230nm近傍の中
立波長が選択され、吸収特性を反映した検量線が得られた(表1、2)。この検量線はバイアス補正のみで他の同機種に移設できることがわかった(表3)。
- 検量線は、重相関係数R=0.99台、検量線標準誤差SEC=0.24前後、予測標準誤差SEP=0.24前後、バイアス±0.05程
度で比較的良好な検量線となっている。種々の試料のスペクトルデータを統合して作成した検量線は各種の未知試料に対してもよく適合し、SEPは
0.2~0.3台に収まり汎用性が高い(表4)。
- NIR分析の精度には、・化学分析値の精度(表1と2の比較)、・粉体試料の均一性などが大きく影響するので、分析にあたってはとくにこれらに注意する。
- また、・8°C、約30%の低温保存庫に約1年保存条件では、粒体保存(紙袋)は変化が少ないが、粉体保存(密封容器)は条件によっては変化を受ける。表2、4
)、・粉砕条件は冬季の方が夏季より良好(表1)、・NIR測定(B社、500型)では、同一試料セル、同一方向のセットが望ましく、人による有意な測定誤差は認められない。
成果の活用面・留意点
小麦育種現場でこれらの機種を利用した場合の近赤外分光法による蛋白質含量測定の留意点として、またフィルタータイプの装置では測定上の参考として活用できる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:小麦の微量迅速品質評価法の開発と基準化
- 予算区分 :特別研究(EPV)
- 研究期間 :平成6年度(平成4年~6年)
- 発表論文等:コムギ蛋白質含量の一粒分析、農業技術 48(7):318-319 1993.7