気象情報による小麦穂発芽予測モデルの開発
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要約
小麦の登熟過程で発生する穂発芽の気象的発生限界条件を解明するとともに変動気象条件下での発生危険度として、前日までの日最高気温と降水量および今後の最高気温と降水日数の予想平年値より、穂発芽予測モデルの開発を行った。
- 担当:農業研究センター・耕地利用部・気象災害研究室
- 連絡先:0298-38-8418
- 部会名:作物生産
- 専門:農業気象
- 対象:麦類
- 分類:研究
背景・ねらい
小麦の登熟過程で発生する穂発芽の気象的発生限界条件を解明するとともに変動気象条件下での発生危険度を推定する方法を確立し、気象の推移から穂発芽を予測するプログラムソフトの作成を行って、総合技術対策の確立に資する。
成果の内容・特徴
- 散水日数10日におけるシロガネコムギとダイチミノリの穂発芽歩合は、連続・間断散水区とも1991年は3%以下、1992年は低温寡照のため10~36%の高率、1993年は農林61号で1.6%以下の発生であった。間断散水は連続散水の約2倍の穂発芽発生率を示した(図1)。
- 刈り取り適期は発育指数(DVI、発芽日は0、出穂日は1、刈り取り日は1.2の指数)を用いれば、ほぼ±2日の精度で予測できる。
- DVI=0.8の到達日から刈り取り終期(DVI=1.1~1.2)までの冷却量(Σ (Tmax - Tmax,n))、
(Tmax < Tmax,n、 TmaxとTmax,nは日最高気温とその平年値)と1mm以上の降水日数との関係(図2)から関東3県の穂発芽は、主に降水日数9日以上、冷却量-25°C・日以下で発生した。
- 発育速度(DVR= (aDh+b) Tmax)の係数a,bは、対象地域の1979年以降の4~7月の毎日の最高気温(Tmax)および出穂期と刈り取り期を入力すると計算される(図3)。なお、Dhは4月1日を起日とする出穂期で出穂日は0.0、刈り取り期(最盛期)は1.0である。
- 登熟期間の発育速度プログラム(前項)で処理後、小麦の穂発芽予測プログラムを用いて、当年の出穂期以降から7月までの日最高気温平年
値と前日までの日最高気温と降水量、また最高気温の今後の予想平年比を入力すると、前日までの発育指数と予想成熟期が出力される。さらに、発育指数0.8
以降の予想降水日数を入力すると、穂発芽の危険があれば危険性有と表示される(図4)。
成果の活用面・留意点
穂発芽予測プログラムは最高気温と降水日数の今後の予測値を入力する必要があるため、それらの精度の高い予測値がないと正確な値は出せない。また、他の品種や地域に適用するにはパラメーターの変更を行う必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:気象情報による低アミロ警報システムの開発
- 予算区分 :高品質輪作・経常
- 研究期間 :平成6年度(平成3年~5年)
- 発表論文等:発育指数と冷却量を用いた小麦穂発芽予測モデル 日本農業気象学会全
国大会講演要旨、46~47, 1993.