主要ネコブセンチュウの同定法と日本国内での分布
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要約
日本に分布する主要なネコブセンチュウ4種を、アイソザイムの差異または天敵出芽細菌系統の付着特異性により、簡便に同定する方法を開発した。これを基に日本国内でのネコブセンチュウ4種の分布を明らかにした。
- 担当:農業研究センター・病害虫防除部・線虫害研究室
- 連絡先:0298-38-8839
- 部会名:生産環境
- 専門:作物虫害
- 対象:果菜類
- 分類:指導
背景・ねらい
日本には、世界共通種であり、農業上重要なサツマイモネコブセンチュウ、ジャワネコブセンチュウ、アレナリアネコブセンチュウ、キタネコブセンチュウの
4種が報告されている。従来、この4種は形態および寄生性により簡易的に同定されていたが、新たに、アイソザイムおよび天敵出芽細菌(Pasteuria
penetrans)との親和性を用いた同定法の検討を行い、併せて、日本国内での分布を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 従来の簡易同定法である、雌成虫の会陰紋形態は同一種内での変異が大きいこと、判別寄主法は2種が同一の寄生性を示すことから、これら2法のみではジャワネコブとアレナリアネコブを正確に同定することはできなかった(表1、下)
。
- エステラーゼおよびリンゴ酸デヒドロゲナーゼのアイソザイムはサツマイモネコブ:I1型、ジャワネコブ:J3型、アレナリアネコブ:A1またはA2型、キタネコブ:H1型を示し(図1)、変異個体群は存在せず、同定上最も有効な手法であった。
- 天敵出芽細菌3系統PPMI, PPMA, PPMHは、4種ネコブセンチュウの分離幼虫に反応させると、個体群を問わず、特定の宿主ネコブセンチュウ種にのみ親和性を示した(表1)。本法は最も簡便で迅速な同定法であるが、サツマイモネコブとジャワネコブはともにPPMIに親和性を示すため、この2種は区別できなかった。
- 従来、ジャワネコブは全国的に分布するとされていたが、新手法による同定の結果、その分布は沖縄県内にほぼ限定されていることが判った。サツマイモネコブ、アレナリアネコブ、キタネコブの3種は全国的に分布が認められた(表2)。
成果の活用面・留意点
- 発生するネコブセンチュウ種の正確で簡便な同定に活用できる。
- 同定用の天敵出芽細菌は配布可能であり、簡便で迅速な同定に活用できる。本同定法を用いる場合、九州以北ではジャワネコブはほとんど発
生していないので、PPMIに親和性を示すのはサツマイモネコブと考えてよいが、千葉県内の1か所でジャワネコブの検出例があるので、他の同定法と併用す
るとさらに正確である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:有害線虫の系統と生態の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成6年度(平成元年~6年)
- 発表論文等:本邦産ジャワネコブセンチュウとアレナリアネコブセンチュウの分類の
再検討、日本線虫学会誌、24巻1号、41、1994。