窒素栄養条件による米粒の糖含有率およびタンパク質組成の変動

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要約

窒素施用量が増すほど、また施用時期が遅いほど、水稲米粒中のスクロース含有率は低下し、全窒素(タンパク質)含有率は上昇した。しかし、全タンパク質中に占めるプロラミンの割合は窒素栄養条件によって変化しなかった。

  • 担当:農業研究センター・土壌肥料部・栄養診断研究室
  • 連絡先:0298-38-8814
  • 部会名:生産環境
  • 専門:肥料
  • 対象:水稲
  • 分類:研究

背景・ねらい

玄米の有機成分について食味との関連で興味が持たれているが、そのデータは少ない。窒素栄養条件を変えて水稲を栽培し、その登熟過程における米粒のスク ロース、アミノ酸等の低分子成分、および貯蔵タンパク質のアルブミン+グロブリン、グルテリン、プロラミン含有率とその組成割合の変動を明らかにする。特 に非消化顆粒プロテインボディIに含まれるプロラミンの増加は食味を低下させるのではないかと注目されている。

成果の内容・特徴

  • スクロースは出穂20日目以降玄米中に一定量存在する成分であり、収穫期の含有率はコシヒカリで6.4~12.6、日本晴で6.5~9.1gkg-1であった。スクロース含有率は窒素施用量が増すにつれ、また施用時期が遅いほど低下した(第1図)。また、コシヒカリで日本晴より高く、好気象年で多雨年より高かった。
  • 玄米中のグルコース、フルクトースおよび遊離アミノ酸は登熟にともない急激に低下し、収穫期の含有率はグルコースがコシヒカリで0.21~0.42、日本晴で0.17~0.36gkg-1、フルクトースがそれぞれ0.05~0.17、0.04~0.17gkg-1、アミノ酸がそれぞれ9~18、5~14mmolkg-1であった。いずれも2次枝梗粒より1次枝梗粒で低く、また粒厚の大きな玄米ほど低下したが、窒素処理によっては変化しなかった(データ略)。
  • 白米の全窒素および消化酵素ペプシンを用いた抽出法で分画した貯蔵タンパク質アルブミン+グロブリン、グルテリン、プロラミンの含有率は窒素施用量が増すほど、また施用時期が遅いほど高くなった(第1表)。 全タンパク質中のプロラミンの割合は粒厚1.8mm未満のくず米は精玄米より、また弱勢穎花は強勢穎花より低かった。またインディカ品種のタカナリはジャ ポニカ品種よりプロラミンの割合が高く、年次間差も見られた。しかし窒素処理によりタンパク質組成割合は変動せず、プロラミンが全タンパク質中に占める割 合は窒素栄養条件によって変化しなかった(第2図)。

成果の活用面・留意点

玄米のスクロースは、米の食味が良好と思われる条件で含有率が高いことから、食味との関連が推測されるが、スクロース含有率のみを変動させた試料を作成できず食味試験には至っていない。

具体的データ

図1 収穫機玄米のスクロース含有率

表1 窒素栄養条件と白米のタンパク質含有率と組成割合図2 プロラミンが全蛋白質中に占める割合

 

その他

  • 研究課題名:作物品質の窒素栄養による制御と診断
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成2年~6年)
  • 発表論文等:登熟にともなう玄米の糖・アミノ酸含有率の推移および窒素栄養条件の
                      影響、土肥誌、65巻5号、1994