自動走行式水田管理機による圃場内無人防除技術

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

稲株倣い自律走行機能、自動回行機能、遠隔操作機能を備えた田植機をベースとした自動走行式水田管理機に、ブームスプレーヤを装着し、圃場外のオペレータの部分的な遠隔支援により、圃場内を無人で防除作業を行う作業技術である。

  • 担当:農業研究センター・機械作業部・水田作機械化研究室
  • 担当:三菱農機株式会社
  • 連絡先:0298-38-8812
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

作業規模が拡大し、騒音・振動・薬剤曝露などのない快適機械作業技術が求められている。水田は均平区形に統一された条件が多いことから、ロボット作業化 に適していると考えられる。そこで、10年先の高度なロボットではなくて実用化に近い、圃場内で人が機械に乗車しなくても良い簡便なロボット的作業技を開発する。まず、航空散布が環境等で制約を受け、地上防除に変換される方向にある時期に当たり、薬剤曝露のない快適防除作業技術を開発する。

成果の内容・特徴

自律走行および自動回行機能を持つ自動走行式水田管理機を開発し、回行時に作業者が畦畔から一部動作を遠隔支援するのみの、圃場内無人防除作業技術を開発した。

  • 開発した自動走行式水田管理機は、乗用田植機をベースに、稲株倣い自律走行機能、知的制御装置による自動回行機能、遠隔操作機能、各種作業機装着機能があり、ハイクリアランス構造である(表1、図2)。
  • 無人作業は、稲株に沿った直線走行作業と、農道ターン圃場の圃場端での回行動作である。直線走行作業は車体前部一対の稲株接触センサで 条間を自律走行する。回行動作は制御装置のプログラムにより、圃場端で、まず、90 ゚方向転換し、ブーム作業幅の7.5m横方向に進み、再度90 ゚方向転 換して停車して作業者の遠隔指示を待つ。この一連の動作を自動で行う(図1)。
  • 畦畔上の作業者の仕事は、正確な次行程への侵入位置決めを遠隔操作で支援することと、薬剤補給である。位置決め支援は手前の圃場端で回 行する場合だけでなく、向側での回行も、回行動作後停止して指示を待っている機械にこちら側から侵入列を見通して侵入位置を微修正することができる。当作 業技術の特徴は、ロボット化で難しい部分を一時的に作業者が支援し、他は自動作業させて作業者を常時拘束せず、比較的簡単な機構で無人作業化した点であ る。
  • 接触センサの感度は稲の状態に応じて調節可能であるが、草丈約30cm以上の条件(移植後約25日、直播後約45日)において良好な作動が得られた。
  • 圃場散布作業試験の結果、作業者が乗車して運転した場合とほぼ同じ時間で作業が可能であった (表2) 。100m先を見通した条間侵入の遠隔支援誤差は±1条であり、作業幅に重複がある散布作業では許容される範囲であった。

成果の活用面・留意点

  • 自動制御の信頼性と耐久性の確実化がつめられ、実用化への検討が期待される。
  • 作業者は、一時的な位置決め支援を行うのみで散布作業中は手が空くため、薬剤補給準備等ができ、1人ならもう一台すなわち2台以 上、2人作業なら3台以上の作業機稼動が可能な省力作業技術で、かつ、薬剤曝露のない快適作業技術であるので、集団営農組織等の団地化された圃場の作業に 適する。
  • 一般の枕地回行圃場では、超音波センサによる回行方式を採用することができる。

具体的データ

表1 自動走行式水田管理機の諸元

表2 作業時間

図1 作業方法

図2 自動走行式管理機

その他

  • 研究課題名:水田超省力作業のための作業機の改良と畦畔から作業する技術の開発
  • 予算区分 :官民交流共同研究
  • 研究期間 :平成6年度(平成5年~6年)
  • 発表論文等:水田作機械の自動運転作業技術の開発(第1報)、第52回農機学会要旨
                     、p.233-234、1993,
                     水田作機械の自動運転作業技術の開発(第2報)、第53回農機学会要旨
                      、p.359-360、1994,
                      特許出願 3件