大豆の高品質乾燥制御法

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要約

大豆乾燥過程での裂皮は乾燥速度を2~3%(d.b.)/h以下とすることで回避でき、そのための通風空気の加湿・調湿限界が一目で分かる空気線図を作成した。さらにこの空気線図中にむれ危険領域を重ねて示すことにより、裂皮並びにむれの危険のない大豆乾燥を可能にする通風空気制御法を明らかにした。

  • 担当:農業研究センター・機械作業部・畑作機械研究室
  • 連絡先:0298-38-8813
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械、作業
  • 対象:大豆
  • 分類:研究

背景・ねらい

コンバイン等で収穫した中・高水分大豆の高品質・低コストの乾燥調製技術の開発が強く求められているが、通風空気の温度や湿度、乾燥速度の許容範囲が狭 く、むれ(発熱)や裂皮などの品質低下を起こしやすいため、うまく乾燥できないでいる。本研究では中・高水分大豆乾燥過程での品質低下の原因となる通風空 気の温・湿度範囲を循環併用式の堆積型通風乾燥装置等を供試することにより明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 乾燥調製による裂皮の発生防止のためには、薄層での大豆子実の乾燥速度を2~3%(d.b.)/hr以下(品種等によって異なる)とする必要があり、大豆子実の水分に対して図1の平衡水分よりも高い温・湿度の空気を通風しなければならない。
  • このときの通風空気の温・湿度は図2の空気線図上の平衡水分曲線で表され、大豆を堆積して通風乾燥する場合には、この曲線より上側の領域の温・湿度の空気を通風する必要があり、通風空気の温・湿度をこの曲線上にくるようにコントロールすれば裂皮の危険がない範囲で乾燥速度を最も高くとれる。
  • むれ防止のためには、層内の通風空気の温・湿度が図2のむれ危険領域(空気温度20°C以上で湿度80%以上の範囲)に入らないことが肝要である。そのためには、水分が18%(w.b.)以上のときには図2の破線より下側の領域の空気を通風する必要がある。
  • ビニールハウス内に設置した循環併用式の堆積型吸引通風乾燥装置(改造コンテナ、容量1t)を用いて水分20~24%の大豆、約1トンを乾燥したところ、20~30時間前後で14%以下のほぼ均一な水分に仕上げられ、裂皮発生率は3%以下であった(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本通風空気制御法は米麦等の高品質乾燥にも応用できる可能性がある。
  • 水分が18%以上のときはハウス内の空気では裂皮の危険があるため、搬入は午後3時以降とするか、加湿等を行って湿度を高くする必要がある。

具体的データ

図1 薄層乾燥状態での裂皮発生率10%を指標とした場合の大豆子実水分と通風空気の平衡水分との関係

図2 空気線図上での裂皮、むれを起こさない通風空気の温・湿度条件と加温、調湿限界

表1 試作乾燥装置による大豆乾燥試験結果

その他

  • 研究課題名:コンバイン収穫大豆の高品質乾燥技術の開発
  • 予算区分 :高品質輪作
  • 研究期間 :平成6年度(平成3~6年)
  • 発表論文等:堆積通風乾燥シミュレーションモデルのパラメータ推定 ─牧草、大豆
                      の乾燥─ 第52回農業機械学会年次大会講演要旨、375-376, 1993