牛乳生産における原価管理のための指標

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要約

牛乳生産の原価管理指標として、牛乳生産費(第2次生産費、現行の全算入生産費に相当)に代表させると、北海道においては100kg当たり6千円程度、都府県においては経産牛頭数15頭以上の頭数規模で100kg当たり7千円程度と設定することができる。

  • 担当:農業研究センター・経営管理部・農業会計研究室
  • 連絡先:0298-38-8416
  • 部会名:経営
  • 専門:経営
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

牛肉・乳製品の自由化により、酪農経営は、その副産物である新生子牛及び廃用牛の価格の大幅な下落に見舞われて、粗収益の減少による収益性の低下に直面 しており、さらに乳製品ひいては牛乳の価格低落も予想される状況下で、生産費の節減を急務の課題としている。そこで、生産費節減の目安を得るために、牛乳 生産費調査個票から牛乳生産における原価管理の指標を策定することとした。

成果の内容・特徴

特定の経営条件における牛乳生産の原価管理指標を策定するために、生産費調査の調査経営を、搾乳牛頭数規模と飼料作延面積規模が類似する経営群にグループ分けして、グループごとに各費目の平均値及び標準偏差を求めた。各費目の指標として、各グループに属する経営のうちコストの低い方から25%の経営が達成している水準を示す第1・4分位数を採用し、これを平均値と標準偏差から算出した(表1、2)。なお、地域間の移動が困難あるいは不可能な労働力及び土地の利用に要する費用である労働費と地代については、経営ごとに投下労働時間あるいは経営土地面積に全国一律の賃金率あるいは小作料を乗じて算出して、その平均と標準偏差を求め、生産費調査個票の数値のそれらと比較したが、わずかな差しか認められなかったので、捕捉もれの可能性の残る算出数値ではなく生産費調査個票の数値を用いた。調査個票は1991年のものを使用した。なお、「生産費」の用語は第2次生産費を示しているが、1992年の調査から改正されている現行の生産費調査の全算入生産費にほぼ相当する。
牛乳生産の原価管理指標として、牛乳生産費に代表させて概観すると、北海道においては100kg当たり6千円程度、都府県においては経産牛頭数15頭以上の頭数規模で100kg当たり7千円程度と設定することができる。なお、都府県の頭数規模の最も小さいグループ1では、提示した原価管理指標を達成しても純収益が負値になってしまうが、(1)純収益は生産費と乳価との関連で増減するものであり、生産費そのものの管理指標としては上位25%の経営が達成し ている水準を示す指標は、その現実性から考えて妥当であること、また(2)このグループの酪農は経営内では副次部門と推定され、複合化のメリットがあること、などを考えると純収益が負値になる原価管理指標でも止むをえないといえよう。

成果の活用面・留意点

この成果は、牛乳生産の原価管理の指標として活用できるが、その際の留意点として、次のことが上げられる。(1)目標とする1頭当たり乳量水準によって 飼料給与構造が変わるので、生産費の内訳である各費目の数値は必ずしも妥当とはいえない面がある。(2)グループは飼養頭数と飼料作延面積を指標として分 けてあるので、どのグループにも属さない経営があるが、その場合は類似のグループの指標を参考とすればよい。

具体的データ

表1 牛乳生産における原価管理のための指標

表2 牛乳生産における原価管理のための指標(都府県)

その他

  • 研究課題名:酪農経営における原価管理情報の策定
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成4年~6年度)
  • 発表論文等:なし