水稲中間母本農6号のツマグロヨコバイ耐虫性遺伝子の同定

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要約

インド型品種Lepe dumaiより導入した日本型系統水稲中間母本農6号のツマグロヨコバイ耐虫性は、2個の補足遺伝子により支配され、RFLP(制限酵素断片長多型)マーカーを用いた解析から、それら遺伝子が第3及び11染色体上に座乗することを明らかにした。

  • 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・稲遺伝解析研究室
  • 連絡先:0255-26-8251
  • 部会名:作物生産
  • 専門:バイテク
  • 対象:稲類
  • 分類:研 究

背景・ねらい

水稲中間母本農6号(以後中母農6号)はインド型品種Lepe dumaiよりその耐虫性を導入した日本型系統であり、これまでの研究で耐虫性の発現には2~3個の補足遺伝子による作用が推定されてきている。しかし、耐虫性程度の評価そのものが難しいことから、厳密な意味での関与遺伝子数及びそれらの染色体上での座乗位置等は明らかにされていない。一方、RFLPに代表される分子マーカーがイネでも開発され、詳細な品種・系統の染色体構成(グラフィカルジェノタイプ)や解析困難な量的形質の遺伝子分析(QTL解析)が可能になってきている。これら分子マーカーによる解析手法を用いて、中母農6号における耐虫性の遺伝様式及び関連遺伝子座を解明する。

成果の内容・特徴

  • 中母農6号のグラフィカルジェノタイプを124個のRFLPマーカーを用いて解析した。その結果、第3染色体に一カ所5マーカー,第11染色体に一カ所3マーカーの2カ所についてLepe dumaiと同様のRFLPパターンを示すものが検出され、これらマーカーの座乗染色体領域にLepe dumai由来の染色体が導入されていることが明らかになった。
  • B1F1(トヨニシキ/中母農6号//トヨニシキ)75個体を対象として、芽出し苗及びn-1葉期におけるツマグロヨコバイ幼虫の生存率及び二齢到達率を指標とした耐虫性検定を行った結果、いずれも抵抗性が19、感受性が56個体、(期待比1:3、χ2=0.004, P=0.95)にそれぞれ分離した。このことから中母農6号の耐虫性は、2個の補足遺伝子により支配されていることが確認できた。
  • 従来法による遺伝子座の特定は極めて難しいため、B1F1集団の耐虫性程度とLepe dumai型多型を示すRFLPマーカーとの分離データとを統合してコンピュータープログラムMAPMAKER/QTLによるQTL解析を行った。いずれのマーカーにおいても耐虫性遺伝子との連鎖が認められ、特に第3染色体ではRFLPマーカ-XNpb144からC198との間に,第11染色体ではG1465の近傍にそれぞれ耐虫性遺伝子が座乗することが明らかになった。

成果の活用面・留意点

  • 今後さらに詳細な遺伝子座を同定するためにRFLPマーカー数および解析集団数を増やした解析を進める必要がある。

具体的データ

    図1:日本型系統中母農6号におけるツマグロヨコバイ耐虫性に関するQTL(計量形質遺伝子座)解析
図1:日本型系統中母農6号におけるツマグロヨコバイ耐虫性に関するQTL(計量形質遺伝子座)解析

 

その他

  • 研究課題名:分子マーカー利用によるイネのツマグロヨコバイ耐虫性の遺伝機構の解明
  • 予算区分 :科研費(重点基礎)、経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成7~8年)