水稲湛水直播の作期移動における主要品種の出葉及び出穂特性

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

水稲の湛水直播栽培で作期移動を行う場合、遅植えになるほど出葉間隔が短縮して生育の進度が速くなる。また、品種により気温、日長に対する出穂反応が異なり、作期の遅延に伴う出穂到達日数の短縮程度が異なるので営農計画上留意する必要がある。

  • 担当:農業研究センター・作物生理品質部・稲栽培生理研究室
  • 連絡先:0298-38-8952
  • 部会名:作物生産
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水稲直播栽培の作期幅拡大は稲作の規模拡大のために重要であるが、移植栽培と比較して不安定であることが指摘され、品種及び栽培法による改良が望まれている。 そこで、茨城県つくば市において3年間にわたり北海道から九州地方までの各地域で栽培されている主要品種を湛水直播し、その出葉及び出穂特性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 出葉特性を品種を込みにしてみた場合、作期が遅くなるほど播種から出穂までの到達日数が短縮するが、止葉葉齢は極端な遅植えにならない限り減少しない(図1)。 出穂到達日数と止葉葉齢の関係を作期ごとにみると、両者の間には密接な関係があり、最終葉齢の違いがそのまま出穂期の差として表れる。 この関係は、作期が遅くなるほどより急勾配になる傾向にある(図2)。
  • 作期移動による出穂期の変動パターンは品種の育成地ごとに異なり、5月播種では北海道、東北、北陸、東海、九州育成品種の順に出穂期が早いが、7月播種では東北の一部の品種の出穂が北陸、東海の育成品種より遅くなる逆転現象が認められる(表1)。
  • 育成地による出穂反応の違いは、堀江らの温度・日長を加味した発育予測モデル(1990)の適用によってよく説明される。 すなわち、北陸、東海の育成品種は温度上昇や日長短縮に対する反応性が高いので、遅植えになると反応性が低い東北育成品種より出穂が早くなる場合がある(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 品種によって出穂反応が異なることは営農計画上留意すべきことであり、本情報で用いた品種あるいは類似の品種により営農モデルを作成する場合の参考となる。
  • 出芽環境が異なる乾田直播栽培では別途データを得る必要がある。

具体的データ

図1:作期移動が湛水直播水稲の出穂到達日数と止葉葉齢に及ぼす影響(平成6年)
図1:作期移動が湛水直播水稲の出穂到達日数と止葉葉齢に及ぼす影響(平成6年)

 

図2:作期ごとにみた出穂到達日数と止葉葉齢との関係(平成6年)
図2:作期ごとにみた出穂到達日数と止葉葉齢との関係(平成6年)

 

図3:温度と発育速度(DVR)との関係(平成7年)
図3:温度と発育速度(DVR)との関係(平成7年)

 

表1:湛水直播における作期別出穂期と到達日数(平成7年)
表1:湛水直播における作期別出穂期と到達日数(平成7年)

 

その他

  • 研究課題名:直播適性遺伝資源の探索と生理学的解明
  • 予算区分 :経常、次世代稲作
  • 研究期間 :平成8年(平成6~9年)