ムギ類赤かび病菌体細胞染色体の核型解析

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要約

発芽管破裂法を用いることによりムギ類赤かび病菌の体細胞染色体の観察が可能である。本菌2種(Fusarium graminearum とF. acuminatum)の細胞学的核型及び電気泳動的核型の解析から、それぞれ種固有の核型をもつことが示唆される。

  • 担当:農業研究センター・病害虫防除部・畑病害研究室
  • 連絡先:0298-38-8885
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ムギ類赤かび病は数種のFusarium属菌及びMicrodochium属菌によってひき起こされる。病原菌としてのFusarium属菌の生態は各々の種によって異なることが知られているが、未解明の領域が多く、とくに種分化機構については、ほとんど調べられていない。そこで、種分化機構解明の基礎的知見を得ることを目的に、分化や変異生成の場である核ゲノム(染色体)の構造レベルでの変異の有無を検討するため細胞学的核型及び電気泳動的核型を検討する。

成果の内容・特徴

  • 糸状菌の体細胞染色体の観察法として多賀ら(1995)が報告した発芽管破裂法を適用すると、赤かび病菌でも観察可能である。標本の作成条件は、表1に示す組み合わせが最適である。
  • 細胞学的核型の分析は作成した標本をDAPI染色し、落射型蛍光顕微鏡(×1,000)で染色体を観察して行った。観察した2種では、それぞれの種毎に特徴的な核型を有していた(表2、図1~2)。
  • パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法により2種の染色体DNAを分離し電気泳動的核型を分析したところ、細胞学的な観察とほぼ一致した。
  • 以上の結果は、供試した2種は別個の種であるとする既存の形態学的分類法(Nelson et a1.,1983)とよく一致し、本法により観察した細胞学的核型は種固有のものであることが示唆される。

成果の活用面・留意点

PFGEを用いて解析する際に、染色体DNAを完全に分離できない場合があるため注意が必要である。

具体的データ

表1:標本の作成条件
表1:標本の作成条件

 

表2:赤かび病菌の細胞学的核型
表2:赤かび病菌の細胞学的核型

 

図1:赤かび病菌の体細胞染色体像(F.graminearum NHL-GZ-78-2,n=4)
図1:赤かび病菌の体細胞染色体像(F.graminearum NHL-GZ-78-2,n=4)

 

図2:赤かび病菌の体細胞染色体像(F.acuminatum NHL-F-1150,n=5)
図2:赤かび病菌の体細胞染色体像(F.acuminatum NHL-F-1150,n=5)

 

その他

  • 研究課題名:ムギ類赤かび病の発生機構及び病原菌の分化機構の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成8年~12年)