イネ萎縮ウイルスの昆虫媒介に必須なタンパク質の同定
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要約
イネの害虫ツマグロヨコバイによって媒介されるイネ萎縮ウイルスの6種類の構造タンパク質のうち、P2タンパク質が昆虫媒介に必須である。
- 担当:農業研究センター・病害虫防除部・ウイルス病害研究室
- 連絡先:0298-38-8932
- 部会名:生産環境
- 専門:作物病害
- 対象:水稲
- 分類:研究
背景・ねらい
イネの主要病原ウイルスの多くは、特定のウンカやヨコバイ等の昆虫によって媒介される。即ち、感染イネで吸汁した昆虫が健全なイネに移って吸汁することによってウイルスが伝染していく。この場合、ウイルスが媒介昆虫の細胞・組織等に吸着あるいは感染しない限り、健全なイネにウイルスは伝搬されない。この伝搬機構を解明するため、昆虫細胞への吸着、感染に必須なウイルスのタンパク質を明らかにする。
成果の内容・特徴
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イネ萎縮ウイルス(RDV)は12本の2本鎖RNAと3種類のタンパク質(P1,P5,P7)が内殻(P3)及び外殻(P2,P8)の2重のタンパク質層に内包された 径約70nmの正20面体をしている(図1)。RDV感染イネを昆虫を経由せずに3年以上株で維持すると、非伝搬株となるが、非伝搬RDVに感染したイネ葉からはP2は検出できない(表1)。
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媒介昆虫であるツマグロヨコバイの培養細胞へのRDVの伝搬株の感染性と、粒子中のP2の存在量との間に相関性が認められる(図2)。
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非伝搬株の内殻粒子(ウイルスゲノムを含む)に、伝搬株の外殻タンパク質を加えて粒子を再構築すると、培養細胞への感染性が回復する。
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以上の結果から、P2は媒介昆虫の細胞への感染に必須であることが考えられる。
成果の活用面・留意点
本成果に立脚し、昆虫細胞へのウイルス感染をブロックすることによる新しいウイルス 病防除法に道を開く可能性が考えられる。
具体的データ

表1:感染イネからのRDV構造

図1:RDVの構造タンパク質。

図2:異なる方法で純化したRDV粒子の媒介昆虫の培養細胞への感染性(左)及び構造タンパク質の電気泳動像(右)。
その他
- 研究課題名:イネウイルスの病原性の解析
- 予算区分 :科振調省際基礎・経常
- 研究期間 :平成8年度(平成6年~10年)