遺伝子導入によるトマト黄化えそウイルス病抵抗性タバコの作出

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要約

トマト黄化えそウイルスのヌクレオプロテイン遺伝子をタバコに導入した形質転換タバコは同ウイルスに強い抵抗性を示し、接種葉への局部感染及び上位葉への全身感染が強く抑制される。

  • 担当:農業研究センター・病害虫防除部・ウイルス病害研究室
  • 連絡先:0298-38-8931
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:工芸作物
  • 分類:研究

背景・ねらい

トマト黄化えそウイルス(TSWV)は、数種のアザミウマによって永続伝搬され、ナス科、ウリ科、キク科などの農作物に甚大な被害を及ぼしていることから、新たな防除法の開発が望まれている。そこで、TSWV抵抗性の作物を作出するため、TSWVのヌクレオプロテイン(N蛋白質)遺伝子をタバコに導入し、TSWV抵抗性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • TSWVのN蛋白質遺伝子(図1)とEl2Ωプロモーターを組み込んだプラスミドベクターを構築し、Agrobacterium tumefaciensを用いて、タバコ(Nicotiana tabacum cv. Samsun NN)の形質転換を行った。
  • 得られた形質転換タバコ14系統にTSWVを汁液接種し、病徴観察によりウイルス抵抗性を調べた。13系統で接種葉における局部病斑数が抑制され、このうち特に局部病斑数が少ない6系統では通常よりも著しく小さい病斑を形成し、全身感染は認められなかった(表1)。以上のことから、N蛋白質遺伝子を導入した形質転換タバコはTSWVに対し強い抵抗性を示すことが明らかとなった。
  • 得られた形質転換体について、メッセンジャ-RNA(mRNA)及びN蛋白質の発現量を解析したが、これらとウイルス抵抗性の強弱との間に明確な相関性は認められなかった(表1)。

成果の活用面・留意点

TSWVの翻訳可能なN蛋白質遺伝子を導入することにより、TSWVに強い抵抗性を示す作物の作出が可能であることが示唆される。

具体的データ

図1:TSWV粒子とそのゲノム構造
図1:TSWV粒子とそのゲノム構造

 

表1:形質転換タバコの病徴と導入遺伝子の発現量との関係
表1:形質転換タバコの病徴と導入遺伝子の発現量との関係

 

その他

  • 研究課題名:トマト黄化えそウイルス(TSWV)遺伝子のナス科野菜への導入と抵抗性検定
  • 予算区分 :バイテク先端(バイテク育種)
  • 研究期間 :平成8年度(平成6年~8年)