ツマグロヨコバイの卵寄生蜂の優占種と寄生消長
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要約
ツマグロヨコバイの卵寄生蜂6種の内、優占種はParacentrobia andoiとGonatocerus spp.であり、イネ苗トラップ法では春と秋に多数捕獲できる。越冬期にはメヒシバ、イヌビエ、スズメノカタビラ、オヒシバ等の枯れた葉鞘内からタマゴヤドリコバチ科の3種が採集できる。
- 担当:農業研究センター・病害虫防除部・虫害研究室
- 連絡先:0298-38-8838
- 部会名:生産環境
- 専門:作物虫害
- 対象:水稲
- 分類:研究
背景・ねらい
水稲の環境保全型害虫管理の推進の一環として、有用天敵である卵寄生蜂の保全、活用が重要である。卵寄生蜂は極めて小さく捕獲が容易でないため、多くの種は寄生消長の通年調査が行なわれていない。そこで、ツマグロヨコバイの卵寄生蜂を対象に、採集法を検討した上で卵寄生蜂相を調査し、優占種と寄生消長を明らかにした。
成果の内容・特徴
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農研センター水田から採集したツマグロヨコバイの卵寄生蜂は、タマゴヤドリコバチ科のParacentrobia andoi、Oligosita
spp.(2種類)、ホソハネヤドリコバチ科のGonatocerus cincticipitis、G. miurai、Anagrus sp.の合計6種であった。
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卵寄生蜂は以下の3通りの方法で採集可能である。
・すくい取り法:口径36cmの捕虫網ですくうと捕獲できる。出穂期以降は草冠部よりイネの条間をすくったほうがホソハネヤドリコバチ科は多数捕獲できる。
・イネ刈り取り法:水田内のイネを無作為に、生育や季節に応じて5~25株(100茎)刈り取り、葉鞘内の被寄生卵を採集する。
・イネ苗トラップ法:育苗用マット(12×22cm)に育てた草丈8~12cmのイネ苗約1200本にツマグロヨコバイを2日間接種して半数以上に産卵させたものをイネ苗トラップとし、畦畔から50cmの水田内に置く。設置後、ツマグロヨコバイの卵が眼点を形成したら回収し、被寄生卵を調査する。
・最も多数、多種の卵寄生蜂を採集できたのはイネ苗トラップ法で(図1)、水田近くの雑草地に設置しても採集可能であった(図2、図1996年)。
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1994~96年の通年調査では、優占種はP.andoiとGonatocerus spp.であり、捕獲数は春と秋に多くなった(図2)。他の3種の発生は僅かであった。
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越冬期にはタマゴヤドリコバチ科の3種の被寄生卵は、メヒシバ、イヌビエ、スズメノカタビラ、オヒシバ等のイネ科植物の枯れた葉鞘内から採集可能である。
成果の活用面・留意点
ツマグロヨコバイの土着天敵である卵寄生蜂の優占種、寄生消長を調査することにより、生物的防除や農薬影響評価のための材料を選定できる。
具体的データ

図1:P.andoiとGonatocerus spp.の採集法別最多採集数

図2:ツマグロヨコバイの卵寄生蜂の寄生消長
その他
- 研究課題名:卵寄生蜂の遺伝資源の評価・利用技術
- 予算区分 :経常、バイテク先端「昆虫機能」
- 研究期間 :平成8年度(平成5~11年)