畑条件下における水田土壌の窒素無機化特性

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要約

従来、水田を畑に転換すると土壌が酸化条件下におかれるため、土壌窒素の無機化が促進されると考えられ てきた。しかし、培養実験およびポット試験で詳細に調べた結果、多くの水田土壌では畑条件下で土壌窒素の 無機化がむしろ低下することが認められた。

  • 担当:農業研究センター・土壌肥料部・水田土壌肥料研究室
  • 連絡先:0298-38-8827
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

水田を畑に転換した場合に、土壌窒素の無機化量がどのように変化するかは、施肥管理や土壌の肥培管理を行う上で重要な問題である。 本研究では、全国から集めた水田土壌を対象に、湛水条件下と畑条件下で土壌窒素の無機化や作物による土壌窒素の吸収がどのように変化するかを比較検討した。

成果の内容・特徴

  • 表1に示した水田土壌について、湿潤土の培養実験(30°C)による土壌窒素の無機化量(一定期間内の発現集積量)を経時的に測定して比較すると、湛水条件下の方が畑条件下より無機化量が多くなる土壌(筑後、上越)とこの逆の土壌(善通寺)があることが判明した(図1)。 しかし、条件による無機化量の違いと土壌特性の関係については不明である。
  • 東北から九州にかけて集めた水田土壌30点についても、上記の2種類の土壌に分類された(図2)が、多くの土壌では、土壌窒素の無機化量は、湛水条件下の方が畑条件下より多くなった。
  • 作物による土壌窒素の吸収量を調べたポット試験では、水稲の方がトウモロコシより土壌窒素の吸収量が多い土壌(筑後)とこの逆の土壌(善通寺)があり(表2)、この結果は上記1の培養実験の結果と対応した。

成果の活用面・留意点

本試験で得られた結果は、転換畑の土壌窒素の無機化や作物による吸収が土壌の種類によって異なった特性があることを示しており、汎用水田の施肥管理や土壌の肥培管理を行う上での参考資料となる。

具体的データ

図1:湛水と畑条件下における土壌窒素無機化量の経時変化
図1:湛水と畑条件下における土壌窒素無機化量の経時変化

 

表1:供試した3土壌の理化学性
表1:供試した3土壌の理化学性

 

図2:湛水と畑条件下における土壌窒素の無機化の比較
図2:湛水と畑条件下における土壌窒素の無機化の比較

 

表2:湛水と畑条件下における作物の土壌窒素吸収量の比較(ポット試験)
表2:湛水と畑条件下における作物の土壌窒素吸収量の比較(ポット試験)

 

その他

  • 研究課題名:水田における施用資材等の窒素動態の解明とその制御技術
  • 予算区分 :経常
  • 研究機関:平成8年度(平成7年~9年)