局地気象研究のための大気ー植生結合モデル
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要約
大気ー植生間に形成される局地気象現象の解明や予測に役立つ三次元・非定常大気ー植生結合モデルを開発した。微気象モデルを局地気象モデルに組み込むことによって、植生の有無や土壌の湿潤度の差異が局地気象に与える影響を客観的に評価でき、作物の生長モデルや生態モデルとの結合が可能となった。
- 担当:農業研究センター・耕地利用部・気象立地研究室
- 連絡先:0298-38-8418
- 部会名:生産環境
- 専門:農業気象
- 対象:
- 分類:研究
背景・ねらい
農耕地の気象は地形の起伏や作物の影響を強く受け、同時に作物も気象から影響を受けている。それらの相互作用を客観的に把握し、さらに気候緩和機能の評価などを行うには、局地気象モデルに精密な微気象モデルが組み込まれていなければならない。大気ー植生結合モデルの開発はこれらの目的に合致するものであり、また結合モデルの利用方法を提示するのが本課題のねらいである。
成果の内容・特徴
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大気ー植生結合モデルは接地境界層・植被層・土壌層で構成される微気象モデルと大気境界層・M層・自由大気で構成される局地気象モデル(木村、1984)の結合である。図1はモデルの内容を二次元座標で表示したが、結合モデルは三次元の非直交座標系を使った非定常モデルである。推定可能な気象要素は風速、気圧、気温、比湿、葉温、地温、土壌水分、二酸化炭素濃度などである。数値実験は三次元の距離空間を格子状に分割して行うが、鉛直方向(Z*)については計算時間の制約などから63分割、水平方向(X,Y)に19等分とした。
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図2は筑波山周辺の57km四方を対象に数値実験を行った水平風速分布(Z*=360m)の結果である(水平方向の格子間隔は3kmとした)。ここでは図2に示す複雑地形上にトウモロコシが一様に群生しているという想定である。図の左下より吹く風は筑波山の影響を受け、左側で減速、右側で加速されている。図3は地球規模で二酸化炭素濃度が上昇した場合、作物内外の微気象環境の動態を予測した結果である。二酸化炭素濃度の上昇は顕熱伝達量の増加と潜熱伝達量の減少を招き、結果的に作物内外の温度上昇を引き起こす可能性がある。このように風速場に対する微地形の影響や下層大気の温・湿度場に対する植生の影響をシミュレーションすることができる。
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大気ー植生結合モデルは複雑地形上の局地シミュレーションや気候シナリオに基づく農耕地環境への影響評価の他に、GPV(格子点予報値)データを使った局地気象の客観解析、異なる植生を想定した気候緩和効果の評価などに利用可能である。
成果の活用面・留意点
さらに細分化した格子間隔で数値実験を行う場合は、粗い格子点予報値を使って内挿する(ネスティング手法)方法がよい。また、境界条件の取り扱いが目的によって異なることに留意する。
具体的データ

図1:大気ー植生結合モデルの構成と非直交座標系

図2:筑波山周辺の地形を対象にシミュレートした水平風速分布

図3:二酸化炭素濃度の上昇に伴うトウモロコシ群落内の熱収支配分の変化
その他
- 研究課題名:耕地気象モデルによる耕草地の熱・水動態変化の解明
- 予算区分 :地球環境(一般別枠)
- 研究期間 :平成8年度(平成2~8年)