水稲ロングマット水耕苗の育苗・移植作業技術

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

水耕法で育苗した長さ6m幅28cmのマット苗(ロングマット水耕苗)を,ロール状に巻き取り,田植機に載せて苗を巻き戻しながら移植する技術である。苗の質量は土付苗の1/5で,6条用田植機を用いると30aの面積を苗補給無しで移植できる。

  • 担当:農業研究センター・機械作業部・作業システム研究室
  • 連絡先:0298-38-8904
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械・作業
  • 対象:水稲
  • 分類:研究

背景・ねらい

水稲作では,作業者の高齢化が進むとともに,育苗・移植作業における苗箱のハンドリング作業の負担が大きく,作業の省力化・効率化のネックとなっている。 そこで,育苗・移植作業の省力化・効率化・軽労化を進めるためには,苗マットを大型・軽量化し,苗箱のハンドリング回数や田植機への苗補給回数を低減することが求められている。

成果の内容・特徴

  • 播種作業は,専用の育苗ベッド(図1)に,(1)マット強度補強材(不織布)を敷き,(2)養液を循環し,(3)専用の播種機で催芽籾を播種する。
    ・播種量は苗箱換算で約200g/箱で,作業能率は約1ha/h(ロングマット20枚/h)である。
  • 慣行の箱育苗のように苗の移動,展開がなく,気温,水温等を適切に管理すれば,10~15日間(最高水温30°C,最低水温20°C)で草丈10~15cm,葉令2~2.5葉の稚苗が育苗できる。
    ・肥料は市販の野菜用養液栽培用肥料を用い,ECは約1.3ms/cmで管理する。
  • 巻取補助装置を用いた場合の巻取作業手順は,(1)苗をローラーで押し倒す,(2)苗を巻き取る,(3)苗カバーをかけるで,作業能率は約0.5ha/h(ロングマット10枚/h)である。
  • 巻き取ったロール苗(図2)の直径は40~45cm,質量は10~15kgである。また,ロール苗は8°Cの貯蔵条件で3日程度は貯蔵が可能である。
  • ロングマット水耕苗を移植するための田植機(図3)は,市販の乗用田植機に苗取り付けアームを設置し,苗送りベルト機構を強化し,専用の補助苗載台を取り付けたもので,6条用田植機なら苗補給無しで30aの面積を移植することができ,苗補給作業時間を含めた移植作業能率は約38a/hである。
  • 水耕苗の坪刈収量は慣行土付稚苗と概ね大差なく,岩手県下での移植栽培試験でも慣行苗と同等の収量を示していることから寒冷地にも適応可能と考えられる。(図4:95/5/11の水耕1と2は1株本数の違い,96/5/29の水耕2は3日間貯蔵した苗)

成果の活用面・留意点

  • 育苗及び田植えには,ロングマット水耕苗用の育苗装置と田植機が必要である。
  • 現在の研究段階では損傷苗率が3~4割程度あり,1株本数は損傷苗率を考慮して多めに設定することが必要である。
    ・また,欠株率は5~15%とやや多めであるが,移植時にできるだけ圃場の水を落とし,移植直後は浅水管理を行うことにより浮き苗を防止し,活着後の欠株率を低減するよう努める。
    ・除草剤は活着後に施用する。
  • 生理・生態的特性が土付苗と異なると予想され,栽培管理技術の確立が必要である。

具体的データ

図1:ロングマット水耕苗育苗装置(単位:mm)
図1:ロングマット水耕苗育苗装置(単位:mm)

 

図2:ロール苗
図2:ロール苗

 

図3:ロングマット水耕苗用田植機
図3:ロングマット水耕苗用田植機

 

図4:ロングマット水耕苗の収量(坪刈)
図4:ロングマット水耕苗の収量(坪刈)

 

その他

  • 研究課題名:水稲ロングマット水耕苗の育苗・移植技術の開発
  • 予算区分 :官民交流共同研究
  • 研究期間 :平成8年度(平成6年~8年)