水田利用の地域特性からみた類型区分

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要約

都府県の水田率70%以上の市町村の水田利用について、稲作の粗収益指数や水田の利用状況、農業構造の特徴及び変化に関する指標をもとに主成分分析を用いて解析した。稲作競争力の高低、複合部門の差異、農業構造の状況から8類型に区分し、各市町村がどの類型に位置づくかを地図化情報として提示した。

  • 担当:農業研究センター・経営管理部・耕種経営研
  • 連絡先:0298-38-8420
  • 部会名:経営,情報研究
  • 専門:経営
  • 対象:水田
  • 分類:行政

背景・ねらい

新食糧法施行よる米の産地間競争の激化等に伴い、今後、水稲や水田畑作物の収益性の水準あるいは労働力の状況等に基づく地域別の相対的な市場競争力に対応 した合理的な作物立地配置が厳しく求められると考えられる。そこで、地域別の水田利用に関する作物立地配置の規定要因を解析するとともに、それに影響する 諸要因を分析し、合理的な水田利用方式の確立に資する。

成果の内容・特徴

  • 地域別の水田利用を解析する場合、北海道と各都府県との経営規模の差異や畑作地帯等の攪乱要因が問題になる。そこで、それらを除外した上での水田利用の特性を把握するために北海道を除く都府県の水田率70%以上の市町村(計1583市町村)を分析対象とした。
  • 次に、全国平均に対する市町村別価格指数に単収指数を乗じる方式で稲作の粗収益指数を把握した。あわせて、水田の利用状況、稲以外の作物の作付け状況、農業構造の特徴及び変化(90年と95年センサスを連結)に関する計15の指標を作成し、主成分分析を用いて水田利用に関する地域類型化を行った。その結果、約60%の情報量を要約する因子として「複合部門展開軸」(第1主成分)、「稲作競争力軸」(第2主成分)、「農業構造軸」(第3主成分)の3主成分を抽出した。
  • 以上の3主成分を用いると各市町村は8つの類型に区分されるが、水田利用の状況からは、水稲単作的類型(類型1、2、3、4)と稲以外の利用が進んでいる類型(類型5、6、7、8)とに整理できる(表1)。
  • 水稲単作的類型は、高単収・高価格を背景に稲作の粗収入指数が高く、経営規模も大きいなど稲作競争力が高いグループ(類型3、4)と、稲作粗収入指数は中・低位で高齢化の進展や農家戸数、耕地面積が減少している(類型1)、あるいは高い恒常勤務農家率(類型2)のグループに区分される。稲以外の利用が進んでいる類型は、稲作粗収入指数は中・低位だが、野菜などの複合経営が展開し二毛作面積率も高いなど土地利用率も高いグループ(類型7、8)と、稲作粗収益指数が低く粗放的土地利用が進む一方で、野菜等への転換もみられる(類型6)、あるいは、稲作粗収入指数が低く作付なしの田や耕作放棄地が多い(類型5)グループとに区分される。
  • さらに、本類型区分をもとに地域別の各市町村の水田利用の地域特性を地図化情報として提示した(図1)。図からいくつかの地域別の特徴が指摘できる。稲作競争力は低いが兼業化の進展により農業構造変化が停滞している類型2は、北陸(富山、福井)、近畿、中国の盆地地域等に多い。稲作競争力が最も高く水稲単作的土地利用が進んでいる類型3は、東北の日本海側と会津、北陸の蒲原平野等に多い。耕作放棄地等粗放的土地利用が進み、今後、水田利用に問題を生じる恐れが強い類型5は、関東では房総、近畿では和歌山南部、中国山間部及び沿岸部の条件不利地等に多い。そして、稲作競争力が高く複合経営が展開している類型7は、四国太平洋沿岸や九州の早場米地帯等に多くみることができる。

成果の活用面・留意点

市町村別に全国と比較した相対的な稲作競争力や水田利用の状況を把握することで、今後の地域別の合理的な水田利用戦略を構築していく上での基礎資料として利用できる。なお、水田利用の具体的な内容についてはさらにデータを収集した上で、整理・分析を行っていく必要がある。

具体的データ

表1:水田利用とその規定要因に関する類型別の特徴
表1:水田利用とその規定要因に関する類型別の特徴

図1:水田利用の地域特性からみた類型区分
図1:水田利用の地域特性からみた類型区分

その他

  • 研究課題名:二毛作限界地域における高収益水田利用方式の解明
  • 予算区分 :新用途畑作(総合的開発)
  • 研究期間 :平8年度(平8~10年度)