直播水稲の根系の活力と根の垂直分布
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要約
営農現場である利根川下流域の泥炭土の復元田において直播様式間で根系の比較を行った。不耕起乾田直播は湛水表面散播に比べて根系が浅いが倒伏に強く、出液速度からみた根系の能動的吸水能力が高い。
- 担当:農業研究センター・プロジェクト研究第1チーム
- 連絡先:0298-38-8512
- 部会名:総合研究,作物生産
- 専門:栽培
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
施肥や水管理など栽培管理の効果は根を通じて現れるため、水稲の生育を適切に制御するためには根系に関する情報が欠かせない。直播は大きく乾田直播(乾直)と湛水直播(湛直)に分けられるが、営農現場で両様式の根系の形態と機能を比較検討した例は少ない。そこで、茨城県新利根町太田新田営農組合の泥炭土の復元田でキヌヒカリを栽培し根系の活力と分布を比較検討する。
成果の内容・特徴
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根系の能動的な吸水能力を示す指標として、収穫10日前に茎基部の切り口からの出液速度を調べた。その結果、不耕起乾直は湛直(表面散播)に比べて出液速度が大きく、生育後期の根系の吸水活力が高い。(図1)
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地下部の地上部支持機能を示す指標として、収穫期に押し倒し抵抗を調べた。その結果、湛直では早期落水管理を行ったため耐倒伏性が必ずしも小さくないが、乾直はそれ以上に耐倒伏性が高い。(図2)
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収穫後に改良モノリス法で根を採取し、ルートスキャナーで根長を調べた。その結果、不耕起乾直は湛直だけでなく耕起乾直に比べても浅い層に根が多く、全体として根系が有意に浅い。(図3)
成果の活用面・留意点
この情報は温暖地東部の泥炭土の復元田において、玄米収量が 487~583 kg/ 10 aの範囲で得られたものである。なお、根系の活力や分布形態は直播様式だけでなく代かきの有無や栽培期間中の水管理の影響を強く受ける。
具体的データ
図1:根系の能動的吸水能力を示す出液速度
図2:地上部支持機能を示す押し倒し抵抗
図3:深さ別の根長密度
その他
- 研究課題名:乾田直播による省力水稲栽培技術の検証
- 予算区分 :営農合理化(地域総合)
- 研究期間 :平成8年度(平成6~8年)