耕境判定のための定住条件の評価手法

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要約

中山間地域の耕境判定は、農業生産・定住条件・国土環境保全の3つの視点から行う必要がある。そこで、3つの視点からの総合的耕境判定手法の指標体系を提示するとともに、耕境判定のための定住条件の評価手法を開発した。

  • 担当:農業研究センター・プロジェクト研究5チーム
  • 連絡先:0298-38-8856
  • 部会名:総合研究
  • 専門:農村計画
  • 対象:昆虫類
  • 分類:行政

背景・ねらい

中山間地域対策の効果を高め、空間利用の適正化を図るためには、「利用・管理すべき農地(耕境内)」と「利用・管理する必要がない農地(耕境外)」を判定する手法を開発する必要がある。「耕境」の判定には「農業生産(農業生産上の優劣)」、「定住条件(農林地の管理主体がある程度快適に生活していけるか)」、「国土・環境保全(国土・環境保全機能をもっているか)」の3視点からのアプローチが必要である。そこで、これら3視点からの耕境判定指標を体系化し、そのうち、定住条件の評価手法を開発した。

成果の内容・特徴

(1)総合的耕境判定のための指標の体系化、(2)定住条件の評価手法の開発、(3)評価手法の妥当性の検証を以下のように行った。

  • 耕境判定指標の体系化
    既往の研究のレビュー、専門家(作物・土壌・土木、経済、環境)及び行政担当者とのブレーン・ストーミングによって「耕境」判定指標を選定・体系化した(図1)。 指標体系は、「農業生産」、「定住条件」、「国土・環境保全」の3視点からの評価指標群からなる。定住条件視点からの評価指標としては、(1)経済基盤(農業以外の産業も含めて生計をたてられるか)、(2)生活基盤(生活する上での最低限の施設が整っているか)、(3)アクセス(利便性が高い地域へアクセスしやすいか)、(4)社会組織(地域の社会組織に活力があるか)、(5)人口構造(社会組織が機能しうる人口構成になっているか)を評価する指標群がある。
  • 定住条件の評価手法
    (1)評価単位は「定住する上での最小の地域社会組織」である集落とする。
    (2)全国19町村497集落から指標データを収集し、その分布から配点(100点満点)・算定式の設計を行い(一次 案)、調査19町村の担当者からの修正意見・達観評価、別枠「中山間活性化」の成果に基づいて一次案を修正した(二次案、表1)。
    (3)算定方法は、条件のウェートの差を考慮でき、比較的計算が容易である点から「重みづけ加算方式」を採用した。その重みづけは、町村担当者の達観評価(評価5条件のどれを重視したか1~5位の順位をつけてもらい、それに5~1点を与えて算出)に基づいて行い、以下の算定式を策定した。
    Y=1.15X1+0.7X2+1.65X3+0.75X4+0.75X5
    ※Yは定住条件の評価値、Xiは順に経済基盤、生活基盤、アクセス、社会組織、人口構造条件の点数
  • 評価手法の妥当性の検証
    本評価手法による調査集落の評価と町村担当者の「達観評価」と比較して、本評価手法の妥当性を検証した( 東北のS町、近畿のM村の例を 表2 に 示した)。同一町村内では、本評価と達観評価の集落序列が同様であるという点では、本評価手法は妥当であ るといえよう。ただし、全国一律(北海道は除く) の基準で評価しているため、M村で「本評価:B、達観評価:III」、S町で「本評価:B、達観評価:I」といっ た地域間格差が生じた。全国一律の基準で 評価するか、一定地域内(たとえば東北)での評価とするかは、今後の課題である。

成果の活用面・留意点

国・都道府県・市町村の行政担当者が中山間地域で空間利用計画を策定し、施策を講じていく場合の基礎資料 ・政策理念の基本的枠組みとなる。ただし、評価基 準が全国一律であるため、一定地域内での評価に用いる場合は評価基準のカテゴリーを変える必要がある。ま た、適用地域によっては指標を追加・削除する必要 がある。

具体的データ

図1:耕境判定手法の体型化
図1:耕境判定手法の体型化

 

表1:定住条件の評価手法
表1:定住条件の評価手法

 

表2:定住条件の評価例
表2:定住条件の評価例

 

その他

  • 研究課題名:定住条件を視点とした中山間地域の評価手法の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成6~8年)