中山間地域における穀類・野菜類の生産と生鮮物の販売動向
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要約
水稲は83%の市町村で栽培され、31%で振興されている。しかし、労働力で68%、収益性で47%が問題をもっている。野菜類は労働力で40%、収益性で35%が問題を持つが、生産見通しは各作目とも現状維持が40%~60%の間にある。販売では直売が展開されており、地域産物等のイメージアップに貢献している。
- 担当:農業研究センター・プロジェクト研究第5チーム
- 連絡先:0298-38-8856
- 部会名:総合研究
- 専門:農村計画
- 対象:行政
背景・ねらい
中山間地域の活性化を図るためには、地域の基幹産業である農業を振興する必要がある。そこで、穀類・野菜類の生産や生鮮物販売、問題点、生産見通し等の実態を全国の中山間市町村へのアンケート調査(平成6年12月に実施し、1,250市町村が回答)により把握した。(本調査での中山間地域とは市町村全体もしくは一部地域が特定農山村法地域及び振興山村地域となっている市町村をいう。ただし、人口が平成4年度において5万人以上の市については都市部のデータが混在するため除外している。)
成果の内容・特徴
- 米・雑穀・豆類
水稲を作付けている市町村の割合は83%であり、その中で「振興している」または「将来振興する」とした市町村は31%であった。しかし、現在の問題点では労働力で68%、収益性で47%の市町村が問題があるとしている(図1)。今後の生産見通しでは、増加が2.3%、現状維持が45.6%、減少が52.1%となり、減少傾向にある(図2)。減少が他の品目への転換を意味しているとは言い難く、大部分は耕作放棄される可能性をもっている。
水稲以外について問題点をみると、いずれも収益性に対する問題が大きく、また、生産見通しでは「そば」以外は減少傾向にある。こうした中で、各品目とも作付面積の1~2%台ではあるが有機栽培が行われ、また、陸稲を除き加工比率が0.5~9.1%あり、特に大豆で3.8%、「そば」で9.1%を占めていることが注目される(表1)。販売方法で注目されるのは「そば」であり、個人直売で6.5%、産直で4.3%、レストラン経営で2.8%等の販売方法が展開されている。
- 野菜類
中山間市町村で作付割合が高い品目は、根菜類では「だいこん、にんじん」、葉茎菜類では「はくさい、キャベツ、ほうれんそう、ねぎ」、洋菜類では「レタス、アスパラガス、ブロッコリー」、果菜類では「きゅうり、トマト、なす、かぼちゃ」、豆類では「さやいんげん、さやえんどう」、土物類では「ばれいしょ、かんしょ、さといも」などがあげられる。
現在の問題点は、労働力と収益性が大きく、どの作目とも労働力で40%、収益性で35%程度が問題を抱えている(図3)。
栽培技術については洋菜類で平均17%、特にアスパラガスで30.6%と高い問題率を示し、また、葉茎菜類で「うど、みつば」、果菜類でトマトが20~23%を示しているが、これら以外の作目については10%前後の比率である。一方、有機栽培が平均で約2%行われており、特に、こまつなの5.2%、ほうれんそうの3.2%、しゅんぎくの3.0%、パセリの3.5%、ししとうがらしの3.6%、しょうがの3.5%などの比率が高い。
販売方法は各品目とも農協共販が主であり、作目別にみると42~70%を示している。市場出荷は平均すると25%程度であり、また、商社等への出荷は2.2%と低い。これら以外の販売方法では共同直売所の4.8%や朝市・夕市の4.1%、産直の3.3%などがあげられる。これらの販売方法はマスコミで注目されているにしてはその比率は低いが、農作物のみならず地域全体のイメージを高める効果を持っているといえよう。こうした販売方法で問題となっているのは、適正価格の設定と品揃えである。
今後の生産見通しは、「現状維持」がどの作物とも40~60%の間に入っている(図4)。
しかし、根菜類と豆類、土物類、及び葉茎菜類の「はくさい、キャベツ」、果菜類の「かぼちゃ」といった重量野菜は「増加する」は8%以下となっている。この原因としては高齢化や労働力不足、重労働が考えられ、播種や収穫・梱包等の機械化が急がれている。増加の比率が減少の比率を大きく上回っている作物は、葉茎菜類の「こまつな、ほうれんそう、ねぎ、ふき、うど」、および最も増加率の高い「にら」と果菜類のトマトである。これら作物は栽培技術を問題としている比率も高く、また、一部の作物を除き施設栽培が多いなどの特徴をもっている。したがって、農家単位の温室や雨よけハウスに対する補助・助成が強く求められている。
成果の活用面・留意点
国・県・市町村等が中山間地域の農業振興に対して具体的対策を講じる際の参考資料となる。
具体的データ

図1:米・雑穀・豆類の現在の問題点

図2:米・雑穀・豆類の生産見通し

図3:野菜類の現在の問題点

図4:野菜類の生産見通し

表1:作目別の栽培方法および販売方法
その他
- 研究課題名:中山間地域活性化指標の類型化と活性化要因の解明
- 予算区分 :別枠(中山間活性化)
- 研究期間 :平成8年度(平成6~8年度)