中山間地域の農地流動化実態と今後の対応方向
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要約
全地目とも制度による流動化が進まない理由の第1は受け手がいないことである。第2の理由は整備済水田では貸したら返らないという不安であるが、未整備水田及びその他の地目は基盤整備の遅れである。大規模農家等に集積する場合においても基盤整備が必要条件となる。
- 担当:農業研究センター・プロジェクト研究第5チーム
- 連絡先:0298-38-8856
- 部会名:総合研究
- 専門:農村計画
- 対象:
- 分類:行政
背景・ねらい
中山間地域では担い手問題が深刻であり、高齢化等で労働力のない農家では耕地を貸したいが、その受け手がいないといわれている。そこで、中山間市町村を対象としたアンケート調査(平成6年12月実施、回収市町村数1,250、回収率75%)を実施し、制度による流動化が進まない理由、今後の流動化見通し、
流動化が進む場合の引き受け主体、進まない場合の農地利用方法について農業地域別に把握した。(本調査での中山間地域とは市町村全体もしくは一部地域が特定農村村法地域及び振興山村地域となっている市町村をいう。ただし、人口が平成4年度において5万人以上の市については都市部のデータが混在するため除外
している。)
成果の内容・特徴
- 制度による流動化が進まない理由
全地目とも理由の第1は「受け手がいない」ことである。
ア.整備済水田:「貸したら返らないという不安」が第2の理由であり、関東、東海、近畿でその傾向が強い。第3の理由は「借り手にとって借料が高い」ことであり、北海道は農地価格が高いことからその傾向が顕著である。第4の理由は「貸し手にとって借料が安い」である。第5の理由は「農業者年金を受けている」ことであり、北海道で高い比率を示している(図1)。
イ.未整備水田:当然ながら「基盤整備が遅れている」が第2原因であり、四国と九州でその比率が高く、北海道、関東、東海は低い。その他の理由については地域的にみても整備済水田と同様の傾向を示す。
ウ.普通畑:「基盤整備が遅れている」が第2理由であり、西日本でその傾向が高く、四国が特に顕著である。第3理由は「貸したら返らないという不安」であり、水田と同様に関東、東海、近畿が高く、北海道で低い。
エ.樹園地:「基盤整備が遅れている」が第2理由であり、近畿と四国で高い。その他の理由の順位と地域的な傾向は普通畑と同様である。
オ.牧草地:第1の理由である「受け手がいない」では地域差が大きく、近畿と九州を除く関東以西で全国平均を大きく上回る。
- 今後の流動化見通し
現況(平成6年3月)に対して5年後では各地目とも増加が見込まれているが、水田は整備済が未整備よりも5年後において5.2%高く見込まれている(図2)。
- 流動化が進む場合の引き受け主体
「作れる条件の農家が順次引き受ける」が最も多く、次いで「大規模農家へ集積する」であり、両者で60%を占める。しかし、水田の場合、「大規模農家へ集積する」で整備済が高くなっている(図3)。このことは、大規模農家等への集積を図るためには、省力的な営農展開を可能とする土地基盤整備の推進が是非とも必要なことを示している。
- 流動化が進まない場合の農地利用方法
「現状の耕作方法が継続される」が最も多く、次いで「耕作放棄される」であった。第3の利用方法は整備済水田では「農林地外に転用される」であるが、集団的農地の一部が転用されることは土地利用の秩序化の面からは問題である(図4)。その他の地目の第3理由は「林地に転用される」である。地域的な特徴として、未整備水田で北陸以西において「現状の耕作方法の継続」と「耕作放棄される」が近接しており、これら地域では基盤整備の推進とともに担い手の形成等、流動化対策を早急に企てる必要がある。
成果の活用面・留意点
国・県・市町村等が中山間地域の農地流動化に対して具体的対策を講じる際の参考資料となる。
具体的データ

図1:整備済水田で流動化が進まない理由

図2:現況及び今後の流動化率

図3:大規模農家への集積が進む場合の整備済水田と未整備水田の比較

図4:整備済水田で流動化が進まない場合の利用方法
その他
- 研究課題名:中山間地域における圃場整備促進条件の解明
- 予算区分 :別枠(中山間活性化)
- 研究期間 :平成8年度(平成6~8年度)