田畑輪換によるダイズ黒根腐病発病軽減効果の持続年限
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要約
転換畑におけるダイズ黒根腐病の発病は,水田への転換(田畑輪換)によって軽減され,水稲2作以上では発病軽減効果が大きく,それは少なくとも2年間は持続する。
- 担当:農業研究センター・病害虫防除部・畑病害研究室
- 連絡先:0298-38-8885
- 部会名:生産環境
- 専門:作物病害
- 対象:豆類
- 分類:指導
背景・ねらい
ダイズ黒根腐病は,転換畑を中心として北海道を除く全国各地に発生し,土壌伝染性の難防除病害としてダイズの安定生産を阻害する重大要因となっている。本病に対する生態的防除法として田畑輪換,有機物施用等があり,防除資材低投入,低コスト及び環境保全の観点からその確立が求められている。ダイズ黒根腐病
の発病は,田畑輪換における前歴の畑期間が短く,水田期間が長いほど少ないことが知られている。しかし,水稲作付け後の発病軽減効果の持続性は明らかにされていない。そこでその解明を試み,生態的制御技術としての実用化を図る。
成果の内容・特徴
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試験圃場は,1987年に病原菌を接種した後ダイズ連作を行い,菌密度が高くかつ均一となるよう設定した本病多発圃場(農研センター谷和原水田圃場,土質は灰色低地土)で,試験区構成は,ダイズ連作区(対照),ダイズ作付け後に水稲を1,2及び3年間作付けした区の4区(1区2a,無反復)である。
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水稲作付け後初年目(1993年)のダイズの発病率は,ダイズ連作区で最も高いのに対し水稲作付区で低く,2作以上の水稲作付区では著しく低かった(表1)。
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水稲作付け後2年目(1994年)の発病推移をみると,水稲1作区ではダイズ連作区の発病とほぼ同程度となり,発病軽減効果は消失した。これに対し,水稲2作区及び3作区では依然として発病が少なく,発病軽減効果が持続した。3年目以降(1995年,1996年)では,水稲2作区及び3作区の発病は,ダイズ連作区よりやや少なかったが,顕著な差ではなかった(表1)。
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1992年の田植前に水稲作付区の半分に麦稈をすきこみ(400kg/10a),湛水時の有機物施用の効果を検討した結果,本病の発病抑制効果はさらに増大した(表2)。
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以上の結果から,水稲2作以上の田畑輪換効果は,少なくとも2年間は持続し,麦稈などの未熟有機物を投入するとその効果が高まることが明らかとなった。
成果の活用面・留意点
一般の転換畑の圃場全般に本成果が適用できるか否かは不明である。試験圃場の規模を大きくし,土性や土質の異なった他の圃場で効果を確認する必要がある。
具体的データ

表1:転換畑での水稲作付けによるダイズ黒根腐病の発病軽減効果

表2:水稲作付け前の麦稈投入によるダイズ黒根腐病発病軽減効果の増大
その他
- 研究課題名:ダイズ黒根腐病の生態的制御技術の開発(総合的開発「高品質輪作」),ダイズ各種病害に対する品種抵抗性とその機作の解析(経常)
- 予算区分 :総合的開発,経常
- 研究期間 :平成8年(平成3~8年)